週末になるとなぜか崩れ気味の天気。
見舞いのため郷里を目指すのが「恒例行事」でも、
雨風激しい中を強行して、というわけにはまいりません。
もう一つの目的、空き家のメンテも、できることが限られてしまいます。
この日、崩れる崩れると数日前から予報に脅かされてはいたものの、Yahoo!天気の雨雲情報から「なんとかもちそうだ」感が強くなり、直前に郷里行きを決定。
実家のメンテを済ませた後、母の施設をめざした。
施設に入り、母の部屋の方へ向かうと横のトイレから出てきた母と鉢合わせた
あら、来たのぉ!ずいぶん久しぶりだねぇ
今日も暑いねぇ、いったいこの頃の天気はどうなったのかねぇ
母が、傍らにあったソファに腰を下ろす
小柄な年寄りが座るにはふかふかしすぎているのか、腰が沈み込みかげんに見える
いや、それだけクッションが柔らかい方が、臀部の肉が薄くなった老人にはよいのかもしれない
(ソファでこうやって話すというのもいいかもしれない・・・部屋だと まとめた荷物を見せながら そろそろ実家に帰るといった話題にもならないし)
歩行器が新しくなったんだって?
そうなんだよ。いつの間にか勝手に前のやつからこちらに変えられてしまったんだよ。
いつまでも同じものを使い続けると どこかが故障してくることもあるからね。安全のためにも段々新しいのに変えていくんだよ。
そうかねぇ。前の方がね、軽いし、動きやすかったんだよ。こちらの方が重いんだよね。
確かに今度の歩行補助器の方が若干ではあるがサイズが大きいようにも見える
療法士さんから送られた写真では確認しづらかったブレーキ部分を確かめると、やはり自転車のブレーキのようなものでなく、バーの部分を掴むことでブレーキがかかるタイプ。
ハンドル中央にある「引っかけ」部にブレーキバーを引っかけることで、ブレーキ状態をロックすることができる仕組みのようだ。
(ロックがかかったまま動かそうとして、なかなか動かない、”こちらの方が重い”という感じ方もあり得るのかな・・・)
母さん、ブレーキを固定するにはここをこうすると・・・ほら、動かなくなる。ブレーキを固定しないまま、歩行器に体重をあずけると転倒骨折となるから気をつけた方がいいよ。
そして、ここをこうして・・・外すと・・・ほらっ・・・また簡単に動かすことができる。
へぇ~、よくそんなこと知ってるねぇ。
でも大丈夫だよ。最近は私もすっかり痩せてしまって・・・ほら、この腕を見てごらん、大分細くなった気がするんだよ。
ここのご飯も少なくてねぇ、だから痩せてしまうんじゃないかな?
少ないって・・・三食ちゃんと食べているんでしょう?
今日のお昼ご飯はどうだった?
朝昼晩しっかり食べているよ。
ご飯だって、ちょっとしかでないんだよ。今の3倍ぐらいあってもいい気がするんだけど・・・
ヘェェ~、まぁ、食欲があるのは健康な証拠だからいいけどね。腹一杯食べない方がいい、腹八分目とは母さんの時代の人が言ってたことでしょう?
で、便秘の方はどう?
それがね、全然無いんだよ。
全然無いって・・・例の赤い薬は飲んでる?
えぇっと・・・飲んでるよ。
そうなの・・・あの赤い薬が便秘薬なんだけどな・・・あまり続けて飲んでいると効かなくなるってこともあるかもね。
でも、三食食べてず~っと便秘ってのもおかしくないかい?食べたものは何処へ消えているのかな?
食べているものが少ないから、全部、血と肉になってるんじゃない?
ちょっといいですか?
・・・あのお隣さんが(自室から出てこられたのだろう)声をかけてきた。
あぁ、こんにちは、どうぞどうぞ、こちらへ座って下さい。
母がいつもお世話になっています。
いえいえ。
よいしょっと・・・
かなり痩せた体型のお隣さんの腰が、さらに深くソファに沈み込む
えぇっと・・・こちらは、息子さん? どちらから来てるのかね。
と母に尋ねるお隣さんに、私から自己紹介。
その表情から、私の顔は覚えて下さっているようだが、それ以外のことはあまり記憶には残っていないようだ・・・
はい、真坂の長男です。XXから来ています。
いやね、うちの母がここのご飯は量が少ない、おなかが空いたと言うんですよ。お昼ご飯を食べてまだ間もないのに・・・。そんなに量が少ないですかね?ここの食事は。
そんなことはないでしょう?
あら、そうかね?私だったら、あの3倍ぐらいあってもいいと思うけどねぇ
それは・・・ないねぇ。
ここからは、母の昔話、そして自慢話、「ええかっこしい」の独壇場となったので、
「1時間に1本のバスがそろそろ出るから」とこの日の見舞いを終えた。
自宅に戻った後、施設長宛に連絡。
総じて、いつもより記憶の衰えを感ずる部分が多かった、という印象を受けました。
新しい歩行補助器については、ブレーキ部分が変わったことに慣れていないようでした。
ブレーキをかけたままロック、その解除、に慣れるには時間がかかりそうです。「前の方が軽かった。新しいのは重い。」表現していましたが、多分、ロックがかかったまま歩行器を使おうとしたりしているのでは?と私は疑っております。
『 食事をしたこと、そのこと自体を覚えていない 』という症状では無いようにも思うのですが、
「食事の量が少ない」
「もっと出してもらっても食べられる」
「私はもっと食べたい」
と、昼食後あまり時間も経っていないのに言っていました。
途中から話に合流したお隣の方も「そんなことはないだろう」と笑っていました・・・。
認知症が進行すると、満腹中枢が衰え満腹感を感じづらくなると聞いたことがあります。外見上変わりなくとも、脳内では衰えが徐々に進行しているのかもしれないと今回感じました。世間で言われる異食などには進行して欲しくないのですが・・・。
「ずっと施設の中に籠もりきりで、外へ出る機会が全くない。デイサービスにはもうずっと行っていない。」とこれまた、真顔で言っていました。
「もうずいぶんお通じがない」と言い、「赤い薬はもらっているの?」と聞くと、「もらっている」との応答。
どこまでが思い込みの類いなのか はかりかねますが、医師の回診などの機会に その話題を持ち出して下さいますと有り難いです。当人も医師から言われればそれで安心する、ということも大いにあると思いますので。
他、「(母の)お母さんは今どうしているかねぇ?」とか、実家のある隣町と母の生家のある遠く離れた所が、ごちゃ混ぜになって会話に登場したりと、この日は大分曖昧な発言が目立ちました。
途中からお隣の方が話しに合流してからは、例のごとく母の自慢話がつづきましたが、自慢話をしているときの母は機嫌がいい・・・ので、うんうんと頷きながら会話に付き合いました。