それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

医療施設とタクシー

タクシー・・・乗りますか?

必要なら乗りますよね・・・乗らなくて済むなら(あたりまえですが)乗りませんが。

 

f:id:masakahontoni:20190217183557j:plain当たり外れ、ってありますよね。可もなし不可もなし、ならいいのですが、ちょっといやなドライバーさんだったら、外れちゃったな、とか。後悔することありますよね。

 

どうせ乗るなら、目的地あたりに詳しいドライバーさんの方が心強いし、さらに印象のいいドライバーさんだったら・・・それがベストですよね。

 

こちらのタクシー会社のドライバーさんはベテランで目的地界隈にとても明るいですよ、とか、このドライバーさんはお客さんからの「いいね!」が多いです、とか。でも、そんなことはほとんどわからない。

 

情報公開など当たり前のようにされていないので、とりあえずは人気のタクシー会社を使い「外れ」を減らそうとする、そんなこともあるかもしれません。

 

でもほとんどの場合、タクシーを呼ぶ/ 拾う時って、急ぎの用事がある時とか、とにかくすぐに、とか、そんな時に呼ぶ、拾う、のがタクシー。


となると、結局、客待ちをしているタクシーの中から、あるいは、目の前の道を走っている流しのタクシーに乗ることになる。

 

 

救急病院に担ぎ込まれれば、ほぼ間違いなく初期治療が施されたのち、転院を促されます。転院先、どうしますか?

 

首尾よく?それなりの病院に転院したとして、多くの場合、そこにいつまでも、とはいきません。自宅へ戻れるのなら良し。戻ること難しく、どこぞの介護施設に入ろうとして、さて、どこへ入るか、どう決めますか?

 

 

タクシー・・・乗りますか?
必要なら乗りますよね・・・乗らなくて済むなら(あたりまえですが)乗りませんが。

 

タクシーなら、たとえハズレでも、ちょっと我慢すれば、さようならです。もうあの会社のタクシーには乗らないぞ、なんて思ったりして。

 

 

でも、医療施設は・・・ちょっと我慢してさようなら、とはいきません。

 

医療施設とタクシーでは比べようがありません。でも、入るところまで、乗るところまで、周辺環境がどうも共通しているように見えるのです。最近それをつくづくと感じ、そうならないためにはどうしたら良いのか、悩んでいます。

 

あらかじめ下調べをしておき、いざその時に遭遇したらどこのタクシーをと決めておく・・・確かに。

 

いざその時、は突発的に訪れます。あらかじめ決めておいたあのタクシーに、とそうなるかはわかりません。

 

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S病院では、患部の治療・処置・手術等が終えた後、2週間ほどで転院先を決めていただく様にお願いしています。お母様はリハビリ目的ということになるので、その施設がある病院の中から希望を伺い、一方で先方に新たな患者を受け入れる物理的余裕、ベッドの空きがあるかを含め当病院から問い合わせ、転院先を決めていくことになります。

 

先日S病院で希望転院先を三つ、手術日まで決めておくようにと話す看護師さんの説明を聞きながらそんなことを考えていた。


乗ってみなければわからぬタクシー・・・それも第一希望が満車で乗車がかなわぬ場合もあるし、何らかの理由で乗車拒否もあるという。だから、第2・第3希望も決めておけと。

こんな話は初めてではない。なにせ骨折での入院は2度目だ。1度目も搬送されたのは救急病院で、同じように程なくして転院を促された。

でもあの時と大きく違うことがある。

確かに、骨折した箇所も腕(肩)だったのが、今回は利き足という程度の違いもあるが、それにも増して一番大きな違い、それは母の認知症の程度が進行してしまっている状態、ということ。

適当なリハビリ病棟に移れればOKではなく、認知症患者のケアに手厚い(と思われる)ところ、そして、その後の転院先までをも念頭に置きながらの選択をできることならしておきたい・・・でも一方で、ではどこが手厚いのかは入ってみなければわからない、転院先をいくら机上で描いたところで実際どうなるかは不透明。

先々まで見通せなくとも、少なくとも目前に迫る転院はせめてうまくいってほしい・・・。

 

なんでこんなことになるのか・・・あれからずっと頭に引っかかっていた。​本屋をぶらついていてふと立ち読みした雑誌に面白い記事があった。週刊東洋経済2月9日号の特集記事「病院が消える」

本旨は、赤字経営が多く、病院が淘汰される時代が到来している、というもの。

f:id:masakahontoni:20190219140654j:plainだが目にとまったのは、その中で挙げられていた「急性期病院と回復期病院」のバランスが各自治体によって大きくちがうということ。

<急性期を脱した患者の受け入れ場所たる回復期病床の整備・拡充を行う>という2025年に向けての国家政策に、今回初めて多少なりとも触れることになったが・・・それを差し置いても、現状あまりにも急性期~回復期病院の病床数のバランスが自治体により異なっているという現状、それを公開データ上で確認する羽目になった。

「羽目になった」と記したのは、まさに母の居住する地域が絵に描いたような「バランスの崩れた」自治体だったということを認識するに至ったから。

 

厚生労働省のサイトに地域医療構想に関するワーキンググループ資料が公開されているが、例えばこちらの平29/5/10判巻末にある参考資料「病床機能別に見た構想区域ごとの病床の必要量 一覧」。

北海道から沖縄に至るまで各区域における「構想上の」病床必要量と、参考として平27年度の病床機能報告状況が提示されている。注目したのは後者。

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例えば北海道においては、大都市札幌区域にある高度急性期病床は4276、急性期病床は15376。これに対し回復期病床は2218だ。コピペした中で、南檜山、北空知に至っては回復期病床ゼロとなっている。

骨折について言えば、次々と突発的に骨折した高齢者が搬送されていく急性期病院、そして大抵の場合、早期の転院を促される。転院先は回復期病院だ。

「皆さん結局場所で選ばれるようですよ」という看護師。たしかに、どこがいいか拠り所になるような各転院候補先の「欲しい・知りたい」情報はないのだから、場所で選ぶことになるのだろう。

大抵は、地元、身近な、そしてある程度の施設・規模を持った病院を探すことになる。でも、その転院先たる回復期病院が圧倒的に少ないのだ、急性期病院に比べて。

つまり、「枠に外れれば」当該自治体以外にある回復期病院をも候補先に加えない限り、第X希望どころか、選択肢が足りない事態もありうるということだ。


なるほど。


この病院の個性は?、あの病院のケアは?、その先にある施設との連携は?、なんていうことを言ってる場合ではない、という自治体も少なからず存在するのだ。

いや、「少なからず存在するのだ」などという表現自体正しくないのかもしれない。

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記事: 第1部「ポスト平成の病院改革」(1) 患者ニーズと合わない病床  「なんちゃって急性期」も

そもそも、現状は圧倒的に多い急性期、圧倒的に少ない回復期、というのが実情なのだ(全体として)。それを2025年までに何とかしよう、回復期の占める割合をもっと増やすぞ、というのが掲げられている構想なのだ。

来年はオリンピックイヤー2020年。2025年などあっという間に到来する。この構想は実現可能なのだろうか? いや、伝家の宝刀「看板の付け替え」の術ありきの”改革”ということなのか?

 

そして・・・妄想を膨らませるのは私の悪い癖だが、回復期病院からの行き先にも同様の状況があるのだとしたら・・・


ケア・介護の基本は自宅でという方針を国が打ち出しているのは、施設・人材両面から見てもう追いつかないという「あきらめ」の政策だ、というのも私の妄想の一つではあるが・・・乱立する人呼んでサ高住に本来入居するはずのない重篤な容態の高齢者が流れているというNHKの特番について書き込んだ覚えがあるが、番組中でヒール役的立場で紹介されていた施設担当者が発したあの言葉「そもそも国がそういう制度にしているのだから・・・」が心に蘇ってきた。


あの番組を見た当時は、なんだこの人、という印象しかなかったのに・・・。

www.masakahontoni.com

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 出処: 超高齢社会の病院はどう変わる?

付け足しになりますが、先の週刊東洋経済にアキ・よしかわ氏がこんな提言をされています;

第一に医療の質を実証的に評価することと、ベンチマーキングが必要。GMやトヨタは質を競い合い、その結果を公表して売れるようになっている。病院に必要なのはこうしたアウトカムの公表だ。

なお、先に挙げた厚生労働省のサイトにある資料の他、東洋経済社が参考になると思われる資料を公開している。以下説明

病院が足りていない地域、過剰な地域はどこなのか、公開データを基に偏差値形式で推計したものを公開している。

偏差値は平均を50と置いたうえで、それぞれのデータの平均からの隔たりを測るもの。今回の偏差値で、どの数値からが過剰あるいは不足とは言い切れないが、偏差値が70に近い、あるいは40に近いということは、医療資源(病院や医師)が全国平均よりかなり乖離(かいり)していることを示している。医療資源の地域的な偏在を示す参考として見てほしい。

具体的には、市町村での人口10万人に対する、①急性期病床(急患や重症に対応)数、②回復期病床(急性期の後の治療に対応)数、③常勤医師数、の3つのデータを用いて、偏差値を算出した。

特設サイトは以下。

toyokeizai.net

回復期病床数のマップを一目見て私が感じたのは「西高東低」だ。

なぜなのか?

これを見て、西日本地域の高齢者は”機会”に比較的恵まれていると言うのは早計だろうか?