それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

ない

S病院からの電話を知らせる通知・・・

夕刻にはまだ早い。なんだろう。

 

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もしもし?

 

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あっ、真坂さんですか? S病院の看護師です。実はですね、お母様の入れ歯が見当たらなくなりまして。
ベッド周りを調べ、シーツも全てチェックしたのですが、見つけることができませんでした。お母様の方は、自宅の鏡台に置いてあると言われるばかりで。大変申し訳ありません。

 

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気にしなくていいですよ。部分入れ歯をするとしっくりこないのであまりしたくない、と言う母を、私の方から慣れるためにもつけなけりゃだめだ、とつけるように説得していたものなので。本人の言うことは、適当にいなしておいて下さい。


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わかりました。すみませんでした。

 

(余談ですが、こういった事はままあることなのかもしれません。S病院の入院手引き書の中にもこんな記載がある - ”入れ歯、補聴器等の私物については自己管理でお願いします。入院中に紛失した場合、当院では保証できません。”)

 

f:id:masakahontoni:20190217182702j:plain入れ歯か・・・入れ歯でよかった。この際 入れ歯はどうでもいい。このまま何も起こらず、騒がずだだをこねることなく、予定通り手術を受けてくれることを祈るのみだ。

 


私にはもう一つやらねばならぬことがある。母の介護保険証だ。


1度目の骨折入院中に母は要支援と認定された。以後1年間、退院直後のリハビリ以外 使われることなく眠っていた介護保険証。そのまま期日を迎えたことも忘れ去られ、昨年春に新規申請を行い 再び要支援と認定された。

このころ、認知能力の衰退が確かに認められ、それを認定の面談に訪れた方にも伝えたが、それが判定に加味されることはなかった。


それからの1年、特に後半、母の認知症(と思われる症状)は徐々に進行の足取りを早め、私、そして妹へと、夜な夜なのストーカー的電話が頻発するに至った。

僅かに週一で通う脳活の集いも最終月となり、どうしたらデイサービスへと誘導することができるのか、母の社会的接点を増やすことができるのか、包括さん共々考えあぐねていたその最中、起きたのが今回の骨折だ。

全ての懸案事項が切羽詰まったタイミングでの出来事でもある。しかも、自らの誕生日前日に骨折し、搬送先の病床で当日を迎えるという、偶然、と一言では心情的に片付け難いタイミングだ。

 

今回は骨折の箇所・程度はもちろん、当人の精神的・肉体的状況も前回とは全く異なる。前回はリハビリを経て、自宅に帰ることができたが、今回はそうならない可能性が高い。

だからこその、介護保険の変更申請が必要、との包括さんのアドバイスでもあるのだろう。

申請には当然、介護保険証が必要になる。私は、母を見舞った帰りに実家に寄りそれを探した。

 

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介護保険証? あれはねぇ、引き出しの中にあるよ。

 

母の言う引き出しは知っている。確かに「以前は」そこに介護保険証などが保管されていたことも覚えている。

実家に入るなり、その引き出しのある部屋へ直進、その中を確かめる。いつの時代のものかも定かでない古びた封筒、書類、それらが束になって保管されている。パラパラとそれらをめくりあの介護保険証がないか確かめる。


無い。


おかしいな。


引き出しから中身を全て取り出し底の方を確かめる。


こ、これは・・・

 

f:id:masakahontoni:20190217182214j:plain一旦破いてしまったものを、しまった、とセロテープで補修したように見える介護保険証の一部がそこに残されていた。


いや、この色は違うな。最初に取得した古い介護保険証に違いない・・・


おっと、この下にあるのは何かな・・・


その色違いの補修された介護保険証の断片の下に、別の色をしたそれらしき断片を見つけた時、私はただ呟くしかなかった


だめだ、こりゃ。