それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

どうなる?どうする?

包括さんと面談、ここまでの経緯、S病院で話したこと、等説明した。

S病院からは包括支援センターに「そちらで担当の真坂さんが入院することになった」と一報が既に入ったという。

包括支援センターを訪問した主な理由は2点。

  1. 現在要支援1の介護保険を変更申請するかどうか
  2. 最終的にどうするのか

について、すり合わせをしたかったから。

実はあの日、骨折で運び込まれたのがS病院と知らされ、場所・アクセス方法もそこそこに、チェックしたことがある。

一つは設置されている診療科。でも、脳神経科、物忘れ外来、老年科といった認知症関連と思われる診療科は設置されていないようだった。

もう一つは関連施設等に介護施設があるか、という点。果たして、S病院には介護老人保健施設があった。老健は一定期間での退去前提の施設。入りやすいと聞くが、現時点でその施設には待機者2名。

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状況に変化が起こったことで、現行の介護保険についてすぐに変更申請すべきでしょうか?

 

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変更申請はするべきです。どのくらいの入院期間になるかで、変更申請を出すタイミングもありますので、手術日程がどうなるかが判明してから、具体的に検討していきましょう。具体的な手術日程が決まったら、またご連絡いただき、こちらで検討させていただきたいと思います。


(S病院で伝えた私の思いとほぼ同じことを包括さんに話す)


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そうですね、私もこれまでのようにお家で独りで自立は大変難しいと思います。今はS病院で治療を続けるとして、その後リハビリ、そして・・・

 

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調べましたら、S病院には老健が併設されている様ですね。

 

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そうです。例えば、リハビリ、老健、そして、という風に進めていければ、と考えています。

 

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それでは、手術の日が決まりましたら、またご連絡します。


包括支援センターでの報告を済ませ、私は実家へ急いだ。山盛り状態のままであるに違いない冷凍庫の整理をしなければ、と思いながら。

門に施錠はされていなかった。自ら救急車を呼び、保険証など一通りのものを忘れることなく携行して救急車に乗り込んだ母。流石に門の施錠までは難しかったのだろう。

玄関を開ける(こちらはきちんと施錠されていた)、三和土(たたき)には資源ゴミを入れた大袋が二つほど放置されていた。収集日に外へ出そうと準備していたのだろう。

廊下に上がり荷物を降ろし、すぐに台所へ向かった。

少々臭う

何かな?

冷凍庫を開ける

ぎゅうぎゅう詰めの冷凍庫は想定の範囲内だ

が・・・

状況は想像を超えていた

おい、おい、なんで?

そこにあったのは、「冷凍されていない」食品・食材の山だった。

後から気がついたことだが、”その時”慌ててガスの元栓を閉め、電気のプラグを抜いたのだろう、冷蔵庫への通電もストップしていた。

こうなると、賞味期限がどうこういう段階ではない。いくら冬寒い田舎ではあれ、常温放置状態が丸一日続けば見るも無残。それが山盛りになるまで詰め込まれているのだ。あるものは袋の中で溶け出し、あるものは開け放たれた袋から漏れ出し、もうそこは、冷蔵庫と呼べる環境ではなかった。

すべてをゴミ袋の中に放り込み、冷凍庫の底の臭いの元と思われるものを洗い流す。あの、週慣ご機嫌伺いの電話の度に確認していた「やわらか弁当食べた?」。そのやわらか弁当もそっくりそのまま、全く手をつけられることもなく、放置されていた。もったいないとは思わないが、結局手付かずだったんだな、というむなしさにとらわれる。

生ゴミの袋は二つ半にもなった。自治体のゴミ回収日を調べる。「可燃ゴミ」回収日にはまだ日がある。また、ここに来て処理するしかない。それぞれの袋の口をしっかりと固く結び込んだ。

居間に入る。

部屋の真ん中にコタツがある

やっぱりな

部屋の中心にコタツを置けば、いやが応にもその周りを動き回ることになる。転倒骨折のリスクが高まる。

気をつけてるから大丈夫

気をつけてもするのが骨折、あれだけたくさんのお年寄りが骨折し続けているんだよ、皆ボーっとしてそうなったわけじゃないんだよ。骨折する要因・リスクを根本から減らしておくしかないんだよ、

わかったよ

いったい何度、そんな会話を繰り返してきただろう

結局、何もわかってないのだ、と偉ぶるつもりはない。が、この思いだけは未だ心から拭い切れていない、
結局、本気・真剣には考えていなかったんだね


部屋を見回す。
隅に設置した台から、電話が畳の上に移動している。母がつまずいたという敷居の段差、そのすぐそばにあった電話台。「その時」母が台の上から電話を引きずり下ろし、救急車を手配したのだろう。

その電話台の一番下の段に赤い背表紙が見える。
妹に言い放った母の「見つけようとしていないから見つからない、あるはずだから大丈夫」という大判赤ノートだった。
やはり、大判赤ノートと言われても、それがもう何を指しているのか覚えていなかったのだろう。見つけようとする対象物がどのようなものかわからないのに、いくら探しても見つかりはしない。

見開きが大きな一月分のカレンダーになっている、その大判赤ノート。1月には4箇所母の書き込みがあった。時々、思い立ち、ああ書かなければ、と気がついて書き込んだのだろう。それも1月15日を最後に書き込みがない。その15日にはこう書かれてあった

「A子への電話 度々電話をしないように」

皮肉にも?タイミング的には、このあと、夜な夜なA子に電話をかけるようになった母。

そして私は、あの急な階段を上り2階へ。急だから2階へなど行ってはいけないよ、骨折したら大変だからね、とは繰り返し伝えてきたが・・・

f:id:masakahontoni:20190206180101j:plain驚いた

二つの部屋に布団が一つづつ敷いてある

私はすぐに察した
一つは父さん、もう一つは私ということなのだろう

昨日まで父さんと本当似がいたのに、いつの間にかいなくなった、あなたのところにいるんじゃないか?

と妹に何度も電話をかけていた母

父さんは何十年も前に亡くなっている、兄さんも✖️✖️にいると言ってるではないか、と妹が諭すのも聞かず、

もう警察にも電話した、警察は動いてくれている、

と常軌を逸したことを言っていた母

二つの部屋にそれぞれ敷かれた布団
あたかも一旦そこに人が寝た後の様に掛け布団を剥いだ様にまでしてある

警察が取り調べに来たら、ほらこのようにここにいたんです、とでも言える様にしたつもりか?父さんが、本当似がいた、と言うのを否定され興奮しての行動か? 認知症というものの深い闇/病みを感じた。

1階居間に戻る。今夜はここに泊まるつもりだ。

りりーーーん

電話が鳴る。誰?

もしもし? ○○花屋ですが・・・

花屋っ?

不覚にも素っ頓狂な声をあげてしまった-”さん付け”しなかった自分が恥ずかしかった

真坂△△(母の名)さん宛のお花を今からお届けにあがりますが、よろしいでしょうか?

断る理由はない
花屋”さん”を待ちながら、新聞配達店、生協に配達・配送の一時休止を申し入れる。

f:id:masakahontoni:20190210181237j:plainお花(花籠)が届いた

お誕生日おめでとう、とある。送り主に親戚のEさんの名がある

そう、本日は母の誕生日なのだ

まさか、その前日に骨折、入院後初めての朝がこの日になることなど誰に想像できようか

病院への生花の持ち込みは禁止だ。撮影したものを今度持参しよう、あの大判赤ノートも。それにしても、普段交流のない(はず)のEさんがなぜ送ってきたのか・・・不思議ではある。

その晩実家に泊まった私は、なかなか寝付けなかった。
とにかく寒いのだ。
1階居間のコタツに入り込むが、寝心地はもちろん悪い。エアコンをつけ、時折ガスストーブをつけながらも、ほっとするような暖かさを感ずることはない。

まどろんだかと思えば、コタツが熱くなりすぎ、スイッチを切る。しばらくうとうとすると、寒さを感じコタツのスイッチを入れる。

母のために買い替えたお一人様用こたつは、サイズが小さく電熱器部分と中に入れた身体とのスペースがあまりない。あるいはすぐ温まるようにそう調整してあるのか。

日付が変わりさらに強まった風の音が、シーンとした真夜中に家の中まではっきりと聞こえてくる。

その風が屋根裏に吹き込んでのものなのか、あるいは外壁のどこかにあたってものなのか、時折上の方からミシッミシッとかすかに音が聞こえてくる。

f:id:masakahontoni:20190210182834j:plainそして、天井のすぐ上 隅の方から明らかに風によるものとは思えぬ、カリッカリッという音が混じる。ネズミでもいるのか? 久しぶりにありとあらゆる暖房器具をフル回転させているこの居間の天井裏は、今宵はさぞかし温まって居心地いいことだろう。

2階に人がいると母が思うきっかけは果たしてこのことからなのか?そういう思いが私をさらにやるせない気分にさせ、寝つきを悪くさせる。

この家を離れ、言う所の都会暮らしがすっかり染み込んでしまった私には、もうこの住環境には耐えられないんだ、そう感じた。