施術室に運ばれ1~2分経っただろうか、
ストレッチャーの足下から医師が顔をのぞかせる。
はい、こんにちは真坂さん。
・・・前回の検査は191x年ですね・・・
そうなんです。間があいてしまいました・・・
毎年検査した方がいいですね・・・
では、胃の方から見ていきましょう・・・
鼻からスルスルと内視鏡が入る。
これといった感覚はない。
5分ほど前に鼻腔から注入された局部麻酔液で、鼻腔内・食道の感覚はすでに麻痺している。
指示されたウェアをまとい、言われるがままの姿勢でストレッチャーに横たわり(側臥位)、流れ作業よろしく施術室に運ばれ、文字通りまな板の上の鯉と化した私に唯一できること・・・それは真向かいにあるモニターで自らの体内をぼーっと眺めることしかない。
・・・はい、ここまでですね。
見たところ、ご心配の腹痛に関わる様な重大な症状は見受けられませんね。ピロリ菌の感染も無いですね。
「経鼻挿入による上部消化管内視鏡検査の受け方」(オリンパス「おなかの健康ドットコム」)
そうですか、ありがとうございます。
・・・それでは、腸の方を見ていきましょう。逆向きに反転してくださいね・・
はい、真坂さん、逆向きにお願いしますね・・・
「はい、真坂さん」がその合図と待ち構えていたかのように、脇の看護師さんたちがササっと私を力づく?で強制反転。
今度は別の大型モニターの画面が目に入る・・・
内視鏡検査の際には、距離的な理由からクリニックそばに宿泊し検査をしている。
前日にチェックイン、翌朝までに”体制”を整え、当日クリニックに赴き検査を受ける。クリニックの側に安いビジネスホテルがあり私のような者には好都合だった。
その安宿が潰れてしまい、今回は3駅ほど離れた場所にあるホテルに宿泊した。
検査のため泊まるには不釣り合いな、広い部屋、手に余るアメニティ、多すぎる数の姿見(鏡)・・・内視鏡検査でここに泊まるのは私一人ぐらいではなかろうか。
上手いタイミングで一番安いプランを選択したが、それでも費用は倍。
とは言え、最終的にはトータルで帳尻あうのではと心の中でそろばんを弾いていた。
前回は大腸にポリープが見つかり切除したが、今回はもう大丈夫だろう・・・手術・切除がなければ費用は最低限、前回より安く済むはずだ、と。
<もうはまだなり>
モニターには蛇腹状の腸壁が映し出され、その中を内視鏡が縫うように進んでいくのが見える。
・・・目指す折り返し地点にカメラが到達したようだ。
それではこれからよく見ていきましょう。
はい、お願いします・・・
今来た道をカメラは戻りながら、医師のチェックが始まる。
ここに一つ・・・
無感情な声がボソッと聞こえてくる
こちらもそうですね・・・
これもそうですね。念のため切除しておきましょう、いずれ大きくなる可能性があります・・・
あぁ、そしてこれ・・・
捕らぬ狸の皮算用、果たして4つのポリープがホイホイと次から次へと切除された。
「大腸内視鏡検査の受け方」(オリンパス「おなかの健康ドットコム」)
奥歯の一部破損が発覚、思いがけずも金を被せ、今回はポリープ切除と、ある意味今年は当たり年。
こんなことなら宝くじでも記念に買ってみるか・・・
点滴に混ぜたという軽い麻酔薬のせいか阿呆なことを思い浮かべる患者は、ストレッチャーごと施術室から休息室へ運び込まれる。
ここで衣服を整え検査終了。
10日後には検体の結果を伺いに戻ってくることになる。
手術扱いになりますので、診療費の保険請求が可能です。
と窓口で言われたが、その手の保険には入っていない。
- 保険未加入、検査もしない
- 保険未加入、検査はする
- 保険加入、検査はしない
- 保険加入、検査もする
あなたはどのタイプだろう?
私は2)だ。保険料ではなく、予算全てを検査費用に割り当てる。そのリスクは承知しているつもりだ。保険は公的のみ、民間保険料ではなく検査費用に、という立ち位置。
母はどうだろう?
検査はしない。私は大丈夫、何処も悪くない・・・が母の口癖だった。
母が入っていた保険と言えば・・・大きく分けて3種ある次の民間保険の中で、
- 生命保険 生命・傷病の保障
- 損害保険 災害・事故等損害の補償
- 医療、障害、介護、所得補償等
生命、損害保険の類い。
いわば、1)、3)複合タイプといったところか?
母と対照的であることに、幾ばくかの安堵を覚えなくもないが、
中途半端と批判される向きには、似たもの親子といった見方もできうるのが歯痒くもある。
「日本消化器学会ガイドライン」のサイトにこんな↓記事がある。
Q8 大腸がんの予防法はありますか?
大腸がんを完全に防ぐ方法はありませんが、発生リスクを高めてしまう危険因子や、反対に発生リスクを下げる予防因子を知っておくことは大切です。
が、釈然としない。
結局のところ、ポリープができる体質だと割り切って、定期的な検診をするしかないのだ、と独り合点するしかない・・・。
人一倍野菜類は摂取するし、(”適度”がどの程度なのかはともかく)運動はしている、喫煙ゼロ、飲酒もほとんどない。加工度の低いもの(=なるべく素材の状態に近いもの)を食するようにもしている・・・。
では、いかんともしがたい因子として遺伝はどうなのか?
遠く遡ったところまでの家族歴は承知していないが、遺伝子検査は行っている。
以下は私自身の癌に関わる遺伝子テスト結果。
遺伝子型の発症リスク”1”を日本人の平均とした場合、低い方の群に大腸癌が入っている(発症リスク0.79)。
一方で、平均よりリスクの高い群には食道癌、リンパ腫、膵臓癌が入っている(表の提示は割愛)。
遺伝子検査でリスクが低くとも、”できてしまう”ものは仕方がない 。それなら都度、早期に芽を摘んでおくしかない・・・。