K病院事務所に戻ると、新たな案件が勃発していた・・・
真坂さん、お母様ですが、足の患部に感染症と疑わしき症状が見られるとたった今担当医の診療で判断されたようです。切開するそうなので、すみませんがご一緒に医師との面談をお願いしてよろしいですか?
(しかし・・・すごいタイミングだな・・・この日そういうことになるか・・・)
わかりました。
お母様はあちらの外来用受付前に座っていらっしゃいます。
おもむろに近づき声をかける。
やぁ!
あれ、まぁ、よく来たね。
(つい先日来たけどね)
たまたまね。何?術後の患部に問題があるんだって?
そうらしいんだよ。
では、先生に診てもらおうか・・・
診療室に案内されると、そこには看護師さんと担当医が待ち構えて?いた。
今回初めて整形外科担当医と会うこととなったが、結構なご高齢のように見える、昔ながらのお医者さんと行った風で不思議な安心感を漂わせる外見・・・。
入院患者の高齢化は以前から耳にしていたが、医師の側にもそれはあるのだろう。
こちら↑によれば、
✔医療施設勤務医師数全体として65歳以上は93%増。✔病院・診療所別にみると、65歳以上@病院が149%増、65歳以上@診療所は53%増、75歳以上@診療所は90%増。
との予想らしい。
2036年にはAI診療の導入はあれど、多くの問診現場では高齢の医師が患者の前に座っていることになる。(だから駄目、というのではない。エェ~というような困った医師は年齢によらない、という不文律は2036年にも通用している気がする)
診てもらう方も、診る方も高齢者、益々そんな状況が一般的になるのだろう。(それが悪いというのではない。くどいようだが。)
診療室に入るなり、まず見せられたのは患部のレントゲン写真。
骨折自体については、経過は順調ですね。腓骨、脛骨共に骨折箇所の周囲、この部分ですね・・・、に仮骨の形成が見られますね。
ただ問題が1つあってね・・・ここ(母の足の脛近くを指差す)・・・ちょっと掻いたりしたのかな・・・周りが赤くなっていたから・・・丁度ボルトの辺りかな。この部分、皮膚に壊死が見られるね。これから切開しますから・・・いいですね。
はい。
豆粒大の大きさのかさぶたのように見えるそれをピンセットで容赦なく剥がし始める
母が顔をしかめる
大丈夫、すぐ終わるから
今度は消毒液に浸した綿棒でぽっかり空いた穴を何度も消毒する。
この辺りによく縫合した糸などがあってそこに菌が付着していて問題となることがあるんだけどね・・・それらしきものは見えないね
そう言いつつ、何度もほじくるように綿棒で消毒
耐える母(痛みにめっぽう弱い母が大きな声を出さない、これは我慢できる範囲内の痛みということなのだろう・・・)
よしと・・・あとは軟膏を塗って・・・
側につきそう看護師さんがすかさずガーゼを被せテープで止める。
この程度なら、問題ないと思うよ。抗生物質は服用することになるけどね。1ヶ月ほど経過を見れば大丈夫じゃないかな。あとは患部に触らないようにね。
わかりました、ありがとうございました。
母と病室へ戻ると すぐに別の看護師さんが現れる
真坂さん、ちょっとよろしいですか?
と今度はナースセンターへ
お母様なんですけど・・・
最近ふらふらと受付待合室の方まで来られることがあって・・・
時々、玄関の方まで行こうとするので、気がついた者が慌てて止めるといったことがあります。
それは、申し訳ありません。私の方からも受付の方には行かないように伝えておきます。ただ、それを本人が記憶しておけるか、という問題がありますが・・・。
一般外来と同じフロアということで区別がご本人につきにくいというのもあるのかもしれません。
それでですね、申し訳ないのですが、あとでお母様の顔写真をとって受付の者がすぐ認識できるように使いたいと思うのですが、よろしいでしょうか?
はい、結構です。
ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いします。
病室へ戻る
それと母さん、受付の方まで行かないほうがいいよ。
どうしてだい?
受付は一般外来だからね。外から一般の人がやってくる。なかには風邪を引いた人がいるかもしれない。
あぁ、そうだね。たしかに、それは問題だ。いやね、こちらには何があるのかな、とか色々興味があってね。でも、なんで私が受付にいるとわかるのだろう?
(歩き回る理由を本人が言う、ということは所謂徘徊とは違うのかな・・・)
だって、母さんパジャマ姿じゃないか。普段着来た一般外来の方々の間をパジャマ着た人がスゥーっと通ったら目立つでしょう。
そりゃそうだ。
あれっ、あのパジャマの人誰だ?となる。ちょっとした笑い話だね。
わかったよ、もう受付の方へは行かないよ。
それじゃあ、頼むよ。
1時間に1本のバスの時刻がそろそろだから、今日は帰るよ。
その1時間に1本のバスに揺られ頭によぎること・・・
入所まで、母の周辺環境に大きな変化なく粛々と進めていきたいけれど・・・
嫌な予感がするのは気のせいか?取り越し苦労なのか?
I have a bad feeling about this.