術後、主治医との面談に臨む。
患部レントゲン写真を前に説明が坦々と続く。
手術そのものは・・・特に問題無く終えました。
・・・このように接合を行いましたが、
やはり骨そのものが・・・固定釘も、なんと言いますか、
ズブズブと簡単に入ってしまうような・・・とてももろい状態でした。
リハビリは慎重に行う必要がありますね。
明日には車椅子、来週早々にはリハビリ開始、そんな方向で考えています。
手術前にもご説明しましたが、この1、2週間に様々なことが起きるリスクが高く、こちらとしてもその辺りに注意して経過を見守りたいと思います。
そうですか、よろしくお願いします。
・・・少なくとも、車椅子での生活ができるぐらいまではいけるのではないかと・・・
(あとは本人次第、ということかな。よし立ってやる、歩いてやる、という・・・)
骨粗鬆症ということもあり、ずいぶん脆くなっている骨自体に対する治療も並行して行います。
月に1度の皮下注射で済む薬剤が出ていますので、そちらを使い骨の強化を図りたいと考えています。
それと入院中の事なのですが、母は片方の奥歯2本が抜け落ち、反対側奥歯もぐらついていることから、硬い固形物の咀嚼に不自由があります。
認知症については、特に短期記憶に衰えがあることと、視空間認知力が低下しています。
さっとファイルにある書類を指でなぞり、医師が応える
食事は・・・大丈夫、すでに刻んだもので対応しています。
そして、ぼそっと呟くように言った。
・・・視空間認知に衰えがあると転倒しやすいんだよね・・・。
医師との面談を終え、そろそろ帰ろうかと身支度を始める頃、男性の看護師さんと思しき方が近づいてきた。
ちょっとお話があるのですが・・・
はい、なんでしょうか・・・
実は、お母様ですが、夜間ずいぶんと大声を上げられたりなさってまして・・・
それだけでなく、下半身を・・・触ったり、汚物、ティッシュなどですね・・・そういったものをあたり構わず投げ捨てたり・・・
ええ!そんなことは今まで一度もなかったことです・・・
これで3度目の骨折になりますが、母は痛みに対して、よく言えば正直・・・
なんと言いますか・・・躊躇いもなく騒ぎ立てる、
そういったことはこれまでにもあったことです。
それでも、時間の経過とともに落ち着きを取り戻していました。
・・・汚物に、とか、投げ捨てる、とか、そんなことは初めて聞きました。
ええ。それとですね、勝手に導尿カテーテルを抜いてしまったり・・・
ミトンなどはつけられているのですか?
はい、そういうことがありましたので、ミトンをつけて勝手に抜いてしまわぬようにしました。
ただ、特に困っておりますのは、相部屋の患者様の方からも寝られないと再三クレームが出ており、このままでは如何ともしがたいと、夜勤の看護師から報告が上がっておりまして・・・
このままでは、と思いますので、個室の方へお移り願えないかと・・・
個室ですか・・・にわかに決断し兼ねます
1日x千円でしたか・・・
はい、x千円x円になります
さすがに今この場で、それを向こう30日間続ける、のかについて、にわかにお返事しがたいですね。差額ベッド代でx十万円・・・ということになりますからね・・・即答は難しいです。
かといって、お隣の方にこれ以上ご迷惑をかけることもできませんし・・・
いや、私どもも、ずっと、ということではなく、お母様が落ち着きを取り戻されるまでの間、ということで・・・
いやぁ、参りましたね。
初めて伺うような内容なので、言葉も出ません。
周りの方にご迷惑をかけていること申し訳なく思います。この1日2日で落ち着くと思うのですが・・・これまでも骨折した時はそうだったので・・・。
・・・。
どうでしょう、今晩一晩、まずは様子を見ていただけませんか?
わかりました。私どもも強制的にお願いすることはできませんので、こちらも色々相談してみたいと思います。
私からも母には言っておきますが、ただ、短期記憶が衰えていますので・・・覚えていてくれるかどうか・・・。
・・・はい・・・。
母の様子を伺うため、私は病室に戻ることにした・・・
- 「3度目の手術③・・・錯乱」へつづく -
術後せん妄とは、手術をきっかけにしておこる精神障害で、手術の後いったん平静になった患者さんが1~3日たってから、急激に錯乱、幻覚、妄想状態といったせん妄をおこし、1週間前後続いて次第に落ち着いていくという特異な経過をとる病態をいいます。
情報源: 術後せん妄 | 健康長寿ネット
一般病棟の入院患者が高齢化するとともに、一般病棟にも認知症患者が増えてきています。それにともなって、夜間にベッドから抜け出して転倒してしまったり、不穏状態になってチューブ・カテーテルを自己抜去したりという事例が増えています。急性期のICUなどでも、せん妄状態になると、同様に自己抜去が起こります。そのため、生命に及ぼす影響を考えて、身体拘束注が、“やむを得ない”処置として行われています。
現場の看護師からは、「できることなら身体拘束なんかしたくない!」「でも、チューブを抜いたり、転倒してしまったらどうするの?」という声が聞こえてきます。
誰でも、「人の自由を奪う」身体拘束などしたくないと思っているはずです。けれど、「患者の安全のため」「治療を優先するため」仕方なく行っているのが現状です。
✔「身体拘束をしない看護」に向けて、国をあげての取り組みが始まった
✔ 身体拘束とは、「患者の行動を制限すること」すべてのこと
✔ 身体拘束は、どのくらいの病院・施設で行われているのか
✔ どのような身体拘束がよく行われているのか
✔ どのような患者に対してどんな身体拘束が行われているのか
✔ 身体拘束を“行わざるを得ない”3つの要件とは
✔ 身体拘束をやめるために行うさまざまな具体策
✔ 身体拘束廃止への動きとそれを阻む要因