それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

「命の終わりと向き合うとき」-NHKドキュメンタリー

NHKドキュメンタリー、「人生100年時代を生きる」第2回を視聴。17・18日連夜放送されたもの、第1回は「終の住処はどこに」だった。

www.masakahontoni.com

 今回はその第2回、録画しておいたものを視聴した。

 

この番組が投げかけてくるボールは、「あなたはどのような最期を迎えたいですか?」というものだ。これは、「あなたの大切な人は、どのような最後を迎えたいですか?」あなたはそれを知っていますか?と置き換えて再度考えてみる必要もある事柄だ。

あなたの夫は、妻は、父親は、母親は、あるいは兄弟は、あるいは・・・。あなたはそれを知っていますか?と。

 

今、自宅で穏やかな最期を迎えようとしていた高齢者が次々と救急医療の現場に搬送されているという。そして、一旦、心肺停止となれば、ほとんどの場合意識が戻ることはなく、結果として長期間病院で延命治療を受け続ける人が少なくないらしい。


そして、人工透析の現場でも、医療技術の進歩により、今や90歳代でも人工透析が可能に。ところが、その治療過程で認知症を発症する患者が続出しているという。治療について本人の意思確認ができないまま人工透析が行われ続けている、という。

思い出して欲しい、前回(第1回目放送)番組中でもあげられたこの数字、

認知症発症率
66歳~ 2.2%
70歳~ 4.9%
75歳~ 10.9%
80歳~ 24.4%
85歳~ 55.5%

一方では、現在7万人いらっしゃるという百歳以上の高齢者、それが、2025年に13万人、2050年には53万人と益々増加すると予想されている。

 

高齢者の9割は延命医療(胃瘻や人工呼吸器)は受けず自然に任せて欲しい、と希望しているというが、実際のところは、胃瘻や人工呼吸器で命をつないでいる(つながれている???)方が多い、という現実。果たして、「命をつないでいる、つなごうとしている」のは本人なのか、家族なのか、医師なのか・・・医療なのか。

高齢者の人工透析については、透析困難症が起きるとそれを断念するしかなかったが、現在では”衰弱が進んだ”高齢者でも透析を続けられるようになった。そして、

現在、80歳以上で透析を受け続けている患者=6万人

1982年に比べ300倍に増加。その一方で、本人の意思確認ができぬまま透析を続ける事態が広がっている。

高齢の当事者との意思疎通が可能であるのなら、

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 出処;高齢者の血液透析の選択 | 日本看護協会

このような↑「意思確認」の場をもつこともできるのだろう。

だが、現場では、本人の意思がわからぬまま1日4時間週3回の人工透析が続いているのだ。医師は「患者は、透析のために生きている、生かされている状況」と悩む。


自宅で最期を迎えたいという願い

それが叶わない事態も広がっているらしい。

救急医療の現場には100歳近い終末期の高齢者が次々と運び込まれている。
映し出された97歳の女性は、呼吸が弱くなっていたところを家族が見つけ慌てて救急車を呼び、自宅から救急搬送された。

医師は自然に命を終えようとしている終末期の患者だと判断しても救命のために全力を尽くす。命は取り留めたが意識は回復せず、人工呼吸気をつけて命をつなぐことになった。

そのことがその方の人生の中で本当に意味のあることなのか、と番組は問いかける。その「意味のあることか否か」を、決めているのは誰なのか、とわたしは付け加えたい。本人なのか、家族なのか、医師なのか・・・医療なのか?

医師「命だけは取りとめた、けれども意識が戻らない、呼吸が戻らない、だから人工呼吸器からは外れない。こういう状態が実はたくさんあるんです。」


なぜ終末期の高齢者が救命救急の現場に運び込まれてくる事態となっているのか?

www.nikkei.com

財政逼迫の中、国は高齢者を病院から自宅へと移す医療制度改革を進め、「高齢者は在宅医等のケアの元、自宅で最期を迎える」ことを想定していたという。ところが家族が命の終わりかどうかの判断がつかず救急車を呼ぶケースが続出、結果的に病院で延命治療を受ける高齢者が増えている、と番組は指摘する。

家族は限られた時間の中で延命治療をするかどうかの選択を緊急に迫られるのだ、多くの場合、現状では。

 

救命救急現場の集中治療室にあるベッド(番組取材の施設では30床)が意識の戻らない高齢者で埋まることも少なくないというが、いずれ患者たちは地域の病院へ転院することになる。

そして、受け入れ病院側の療養型ベッド(取材施設では60床)は延命医療を受ける高齢者で占められ、多くの場合延命治療が長期化する。

受け入れ病院医師「本人自体が意識のない方、自分で自己決定力のない方もいますので終末期をどうするか悩むこともあります。」

85歳以上の高齢者が一度心肺停止になると人工呼吸器などが外れ退院できる確率は、0.5% (全国の救急搬送87.7万人の高齢者の院外心停止を分析ー京都府立医科大学 研究チーム)


全国にある289の救急救命センターに行ったアンケート調査(146の施設が回答)では、

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  • 「大往生を迎えようとしていた人に対し高度延命治療がなされ家族も誰もがやり切れない気持ちになる」
  • 「患者の尊厳が失われていないか?」

 

今、医学界、国から”延命医療の中止に関するガイドライン”が示され、人工透析、胃瘻、人工呼吸器といった延命医療をどうするかについて、本人の意思を尊重、家族などとよく話し合う、医療チームで検討などで不開始・中止が可能となっているのだ。

 

会田薫子教授

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延命について異なる考え方とは、延命医療を続けていくのが本人らしいのか、止めるのが本人らしいのか、ということ。最後は機械的に延長してるんですよね、人為的な手段で命を延長しているこのようなやり方は。

”そういえばお父さんは昔嫌だって言ってたわ”ってお父さんが言ってたことに反するな、と思ったらそれはご家族の中で話し合ってもうこれはお父さんらしく見守りましょうかって。
これは辛い選択ではなくご本人の人生の集大成をサポートするための、みんなの大事な話し合いになると思います。

 

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命の終わり方を選択する時代。そこの覚悟が私にはまだできていない。難しい時代になったな・・・。


人工呼吸器等の生命維持装置中止の選択肢を患者や家族に示していますか?と聞いたところ回答した117の施設のうち46の施設が、示していると答えている。

ところが一方で、選択肢を示していると答えた医師からこんな声もあるという。

終末期であるにも関わらず最後をどのように死にたいかが議論されていない。本人も家族も死をひと事と思っている日本人が大部分で、急変時にどうしていいかわからないと言うケースが多い。

 


最後の医療をどうするのか

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)という取り組みが始まっている。ACPでは第三者が患者・家族と話を重ね、最期に望む医療をどうするかを共に考える。認知症などで本人の意思を確かめられない場合、家族や介護スタッフから、本人がどのような最期を迎えたいと考えていたかを探る。

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www.nhk.or.jp

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将来、どんな病気になるかも分からないし・・・どうしてほしいかなんて分からない・・・

 

最後に番組では、この放送の冒頭に映し出された模様が再度流される。病床に寄り添う医師が在宅医であり、また、ACPという取り組みを進めている在宅医であることがここで視聴者の理解するところとなる。

そして、最後に映し出されるのは、終末期が近づく年老いた女性の傍らに寄り添う在宅医が、同じく寄り添う近親者、そして介護スタッフに話しかける様子だ。

在宅医「呼吸が非常に遅くなったりして これはちょっともう生きるエネルギーが絶えてきたかなという時も 救急車はなるべく呼ばないで 私に一報下さって この場で静かに最後を看取らせてもらおうと 僕は思っているんですけどそれでよろしいですか?」

うなずく近親者、介護スタッフ・・・


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患者は自分からこんな風に死にたいとかこんな事はできるだけやめて欲しいなと聞かれないと言えないと言うことですよね。
人から問いかけられたり、逆に問いかけたりする姿勢・態度を周囲の人は失わないでほしいということだと思います。

 

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今回も、阿川氏の言葉が気になる。

分からないからこそ、あの場合、この場合と、前もって心の準備含め、あれこれと始めておく、というのがこの番組の投げかけてきたボールに対する私なりの受け取り様。

分からないから(それはその通りだけれど)、そのままでいいのか?時の過ぎゆくままに身を任せるのか?そしてその時が来たとき、何かを決めるのは誰?自分なのか、近親者なのか、医師なのか・・・医療なのか。