本当の狂気とは何か?
夢に溺れて現実を見ないのも狂気かもしれぬ。
現実のみを追って夢を持たないのも狂気かもしれぬ。
だが、一番憎むべき狂気とは、
あるがままの人生に、ただ折り合いをつけてしまって、
あるべき姿のために戦わないことだ。
ー セルバンテス ー
これまで度毎に発し続けられてきたこのフレーズ、
果たして最後の舞台で白鵬氏はどう演じるのだろう?
目立つほどには減らぬ感染者数、お世辞にも余裕があるとは言えぬ座席間隔、それが漬物石の如く私にのしかかる。
にもかかわらずチケットを持ち続けたのは、最後の雄叫びを目の当たりにすることへの興味(?)が失せなかったから。
関係者に陽性反応が出、既に17〜24日の公演は中止となっていた・・・
以降28日千秋楽までの公演は果して・・・
幕が開くのなら・・・それは最後の機会になる。
26、27、28日と三日間をどうするか、判断がしばし保留となったのは、何としてでも幕をまた開けたい、こんな形での幕引きにしたくない、という関係方々、演者方々、とりわけ主役の思い、信念が大きかったからと容易に想像できる。
が、
ウイルスは非情だ。
24日に断は下った。
既にお知らせしております通り、公演関係者に新型コロナウイルス感染症の陽性反応が確認されたことから、2月17日(木)~2月24日(木)の公演を中止とさせていただいております。
その後、新たに複数の公演関係者の陽性反応が確認されましたため、医学専門家の監修も得て慎重に検討を重ねました結果、誠に残念ながら、この後も公演の続行は困難と判断し、2月26日(土)から2月28日(月)千穐楽までの公演を中止とさせていただきます。ー 日生劇場 ー
「ラ・マンチャの男」公演が千穐楽を待たず中止になりましたこと、誠に残念の極みでございます。
昨年十二月、本年一月と二ヶ月に亘る稽古を無事済ませ、二月六日に初日を開けられましたこと、自分の中では奇跡に近いと思っております。
この作品を楽しみに待っていて下さったお客様方、また、千穐楽まで上演しようと努力をしてくださったスタッフ、キャスト、そしてこの作品を記事として取り上げて下さったマスコミの方々に私よりも心からの御禮とお詫びを申し上げます。
本当にいろいろとありがとうございました。ー 白鸚 ー
あの年齢であの舞台、それ自体ある意味奇跡だったここ数年、
歳で万事が決まるわけではないとは言え、人類がAgingから逃れることはできない。
いつの日かくる限界、それを、どこで、どこに、どう、線を引くのか、引くべきなのか。
一番憎むべき狂気とは、
あるがままの人生に、ただ折り合いをつけてしまって、
あるべき姿のために戦わないことだ。
軽々に物言うこと自体憚られるが、
自らを鼓舞し、折り合いをつけることなく、氏は戦い続けた、続けていた、続けている、そうに違いない。
せめては最後の三日間、何としても幕を開けたい、と「あるべき姿」を胸に、関係方々皆ぎれぎれまで戦い続けたのだろう。
有り難うございました。