それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

「アルツハイマーは治せる、予防できる」・・・のか、という本(その⑤)

そして、ここからがこの筆者が一番この本で伝えたかった部分、第6章になります。

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ここで登場するカタカナは、

f:id:masakahontoni:20210610150038j:plainネプリライシンと呼ばれる酵素。本書で最もキーとなる単語。一つの酵素の名称。
ソマトスタチンと呼ばれるホルモン。一つのホルモンの名称。
アミロイドβオリゴマー  Aβの凝集。Aβが 2~30 個程度集合したもので、毒性を持ち、アルツハイマー病の病態を引き起こす病原的因子。

アミロイドβが蓄積してアルツハイマー病になる人と、

蓄積せずアルツハイマー病にならずに一生を全うする人がいる

 

f:id:masakahontoni:20210609133112j:plainなぜ蓄積するのか?

 

f:id:masakahontoni:20210609133140j:plainアミロイドβが蓄積する原因は、分解システムの機能低下、つまり加齢に伴うネプリライシンの活性低下ではないか?


ネプリライシンは、アミロイドβ分解だけでなく、毒性発揮してアルツハイマー病を進行させるアミロイドβオリゴマーの量を減少させる。

Wikipediaには、このような↓解説があります。

「ネプリライシンを欠損したノックアウトマウスは、アルツハイマー病に似た行動障害と脳へのアミロイドβの蓄積を示し、アルツハイマー病の過程と関係していることの強い証拠となっている。

ネプリライシンはアミロイドβ分解の律速段階であると考えられており、治療標的となる可能性があると考えられている。

ペプチドホルモンであるソマトスタチンなどの化合物が酵素の活性レベルを上昇させることが示されている。

加齢と関係したネプリライシンの減少は、酸化損傷によって説明されるかもしれない。

酸化損傷はアルツハイマー病の原因因子であることが知られており、認知機能が正常な高齢者と比較して、アルツハイマー病患者では酸化したネプリライシンが高率で存在する。」

 *ノックアウトマウスとは、遺伝子操作により1つ以上の遺伝子を欠損・無効化させたマウスのこと

 

☆最も効率よくアミロイドβ42を分解するネプリライシン

☆ネプリライシン活性化はアルツハイマー病の99%を救う


◆ネプリライシン活性化させる二つの方法の開発へ

・アルツハイマー病を注射で治療・予防する

 ウィルスベクターによる治療(1回の注射で10年以上の効果。発症後の認知機能低下も改善できる。本当の意味で根本治療といえる遺伝子治療)

注釈)ウイルスベクター:遺伝物質を細胞に送達させるようデザインされたツール。標的細胞は、新しい遺伝子使用を開始してその機能を実行する。

最近よく耳にするコロナウイルスに関わるワクチンで、アストラゼネカ製とモデルナ製はmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン、アストラゼネカ製はウイルスベクターワクチンに属する。 

・アルツハイマー病を飲み薬で治療・予防する

 薬理学的にネプリライシンを活性化させる

 ネプリライシンの活性を調整する因子ソマトスタチン
 ソマトスタチンの減少は;
 →ネプリライシンの活性低下
 →アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー分解の低下
 →アミロイドβ蓄積やアミロイドβオリゴマー形成
 →アルツハイマー病へ

 

そして最後に筆者はこうまとめている。

2025年、団塊の世代(800万人)が75歳以上の後期高齢者に なり、

医療・介護中心に社会保障各分野で問題噴出が予想される(2025年問題)。

深刻なのは、認知症患者の急増。2025年には700万人超と推計。65歳以上の5人に一人が認知症という社会。

伝えたいのは、アルツハイマー病についての正しい知識と、生活の中でそのリスクを下げる方法

アルツハイマー病は多因子疾患(様々な危険因子が関わって発症)。

加齢が最も大きな危険因子だが、他にも生活環境上のリスクがあり、それを下げる生活を心がけることが予防につながる。

現在わかっている科学的根拠のあるアルツハイマー病リスクを下げる方法は;

  • 適度な運動
  • 睡眠障害を治す
  • 頭部外傷を予防する
  • 適度なアルコールの摂取
  • 動脈硬化を予防する
  • 糖尿病を予防する
  • 中年期メタボリックシンドロームを予防する
  • 性ホルモンの低下を抑える

 

 

旧知のリスク軽減方法ですが、現実は「そうはいっても」と実行している人は限定的というのが実際なのかも。

敢えて、私見を一言・・・4番目の「適度なアルコールの摂取」については、寧ろ「アルコールの摂取は適度に抑える」と表現した方が現実的には健康な人が増える気がします。

全くアルコールを嗜まない人が敢えてリスク軽減のために適度な?アルコール摂取をはじめることの恩恵と、一般的に非常に多く存在すると思われる過剰にアルコールを摂取している層が酒量を適度なレベルに抑えることの恩恵、とを比べると後者の方が社会的には大きな意味がある様な気がするから。

 

因みに私の母親の場合、どうだったか?

  • 適度な運動 →全くしない。近隣の八百屋に行くのが運動だ、と言い始めた頃にはすでに足腰が弱っており、それさえも実行するのには障害があった。人は、自らの肉体的衰えに気づいてから、では運動でもするか、と言い始め重い腰をあげようとするものなのかも。そうなる前に運動しておくことがとてもとても重要なんだけれど・・・。往々にして、衰えに気づいてからでは、如何ともし難い限界が既に存在し、大きな忍耐が必要となる・・・故に、結局遠ざかりがちになる、諦めてしまう、という人間の性?
  • 睡眠障害を治す →基本的に夜更かしだった。寝付きは早く、朝はめっぽう強い、超早起き、という昔の高齢者のイメージとは異なり、母はこの類ではなかった。今時の高齢者は、TVもコンビニも飲食店も24時間営業、という恵まれた周辺環境のせいか、昼間からゴロゴロし足腰を更に弱らせていることが多い。昼間動かないので当然寝付きも悪い、ということなのかも。そして今後高齢期むかえる層の睡眠障害には、スマホ等に起因するケースがグンと増加する気がする。
  • 頭部外傷を予防 →母に外傷はなかった、と思われる(逆に目眩→転倒→頭部打撲を経験している妹がこれに当てはまるのではないかと心配)
  • 適度なアルコール摂取 →ない
  • 動脈硬化を予防 →脂っこいものが大好きで、栄養バランスを意識することはなく、そのような観念自体も(世代的に?=幼少期ひもじい思いをした世代)無い。
  • 糖尿病を予防 →初老の段階で初期糖尿病
  • 中年期メタボリックシンドロームを予防 →メタボ体型。それが後々膝関節への負荷となっていた点は否めない
  • 性ホルモン低下を抑える →TV、週刊誌の話題に感化されやすいため、エストロゲンが、と口にするなど、興味は抱いていた風。が具体的に何かを実践していたかはわからない。

冷徹に判定すれば限りなく0点に近い。

母が実家にいた(健常?〜MCI期?)頃こそ、「私は大丈夫」「歳を取れば皆同じ」を繰り返し何もしない母に苛立ったこともあったが、今となってはそれを責める気にもならない。

母が若かりし頃、周りにいたお年寄りは皆そうであったのだろう。

当時はこれほどまで誰もが長生きをした時代ではなく、となれば、今ほど目立って認知症を発症した人を間近にそこかしこに見る機会は限られたろうし、「相対的に」少なく見えた、特殊ケースのように見えていた、のかもしれない。

急激に高齢化が進む中、その流れに取り残されるかのように、若かりしころの「時間軸」での生活以外に思いをはせる、想像してみることができなかったのかもしれない。

 

リスクを下げる生活、を部分的によりわかりやすく提示しているサイトがありましたので取り上げておきます。

 

vol.133 アルツハイマー病の予防は運動と睡眠で

 
・どんな運動が効果的か

アルツハイマー病では、βアミロイドやタウと呼ばれるタンパク質が脳に蓄積したり、過剰なリン酸化を起こしたりすることで、海馬の委縮や神経伝達組織の機能低下が起こると考えられています。

最近の内外の研究から、脳内で起こるこうした負の現象の改善に、運動が有効であることが分かってきました。

運動をすると、βアミロイドを分解する酵素(ネプリライシンなど)が活性化され、βアミロイドの蓄積を防ぐとする報告があります。

また、運動をすることで筋肉細胞から放出されるホルモン(イリシン)が、脳の細胞死を抑制する神経栄養因子(BDNF)を増やし、海馬の神経細胞の活性化や神経伝達機能を向上させるとの報告もみられます。

さらに、運動が体内の酸化ストレスを減少させ、同時にインスリン分解酵素を活性化させて、タンパク質のリン酸化や蓄積を防ぐ効果があることも指摘されています。

では、どのような運動が、予防に効果的なのでしょうか。

多くの研究で推奨されているのは、次のような運動です。


<効果的な運動方法とは>

 

f:id:masakahontoni:20210610174318j:plainウォーキングや軽いジョギング、サイクリングやエアロバイク(自転車こぎ)などの有酸素運動が良い。

強い運動を週1回やるよりも、30分程度の運動を週3~4回程度おこなうことが大切。理想は毎日。

運動の効果は短期間でみられることもあるが、半年から1年程度は運動を続けることで効果が明確になる。

義務的におこなうのでなく、楽しみながら運動をすることが大切。

運動をしながら、同時に脳に負荷をかける(頭を使う)とより効果的。

たとえば、からだと脳を同時に使う運動プログラムを開発した国立長寿医療センターでは、ウォーキングや踏み台昇降をしながら100から3を引き続ける計算をしたり、2~3人でしりとりをしながら歩く方法などを推奨している。

・睡眠障害とアルツハイマー病

睡眠とアルツハイマー病の関係を研究しているアメリカのワシントン大学の研究グループによると、睡眠効率が悪い人は最大で5倍以上も初期のアルツハイマー病になる可能性が高いとされています。

一般に、高齢になるほど睡眠の質が低下し、睡眠障害を起こす人が多くなります。

また同時に、βアミロイドやタウなどが蓄積しやすくなり、アルツハイマー病を発症するリスクも高くなります。

睡眠障害とアルツハイマー病とは、どちらが先に生じるのかはまだ判明していませんが、相乗的な関係にあるものと考えられています。

それだけに、最近物忘れが増えたと感じる方は、睡眠不足を解消し、睡眠の質を高めることが大切です。(睡眠の詳細については、バックナンバーのvol.117「中高年らしい良い睡眠とは」を参照)