それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

読んでみた・・・「認知症ケアのバリデーション・テクニック」

”バリデーション、認知症”・・・でググってみると;

「1963年、米ソーシャルワーカーのナオミ・フェイル氏によって生み出された認知症高齢者とのコミュニケーション技法。

主にアルツハイマー型認知症及び類似の認知症と診断されたお年寄りに用いられる。

認知症の人が大声を出す・徘徊するといったこと全て意味ある行動と捉え、なぜそのような行動をとるのかに立ち返る。嘘をつかない、ごまかさない、ことで信頼関係が深まり、高齢者の言葉の奥底にある真の訴えを理解する、という基本的態度を重視する。

日本における第一人者都村氏によれば、重点を置いているのは傾聴の姿勢。認知症の人にとり、言葉は記号にすぎず中身がなくなってしまう。聞いているように見えていても言葉を理解しているわけではないが、話を聞いてくれる人/聞いてくれない人、の理解はしている、という。」

とあります・・・(関西福祉科学大学教授・都村尚子氏に関する動画↓)


この「認知症ケアのバリデーション・テクニック」には、バリデーションというものの全容・テクニックが微に入り細に入りつまびらかにされているわけではありません。

が、バリデーションというものが何に重きを置いているのかを知るための序章的役割は十分果たしているように思えます。

”その人”の認知症の程度により4段階に分け、それぞれのケースについてどう対応すべきか、その骨子といくつかの具体例が提示されています。

f:id:masakahontoni:20200311115443j:plain

第1段階「認知の混乱」にいる人に効果的なテクニック

オープン・クエスチョン(自由な返事を促す質問/はい、いいえ、で答えることのできないもの)を使う。なぜ?、という質問は避ける。いつ、どこ、誰、何、どのように?
  〇 調子はいかがですか?
  〇 どうしたのですか?
逆に、クローズド・クエスチョンの多用は、返事が限られてしまいインタビューのようになり不信を抱かせるもとになる。

親密になるまである程度の距離が必要。

「なぜ」は私たちのために説明を求める、ということであり、理解したいという私たちの欲求を満たすためのもの。 多くの場合、当人はなぜそのように感じ、考えているのかわからない。「なぜ」という質問は相手を問いつめるような質問で、イライラや怒りを生むもとになる。

お年寄りの使ったキーワード(強調して話したこと)を使い、共感し意識を集中した上でリフレージング(言い換え)する。

正しくリフレージングすると、わかってもらえた、受け入れてもらえたと、思わず「そうなの!」と言うもの。リフレージングは単なる繰り返しではない。

✔ リフレージング、キーワードを使う

✔ 昔の思い出話をする

✔ なじみのある対処法を見つける

✔ 好みの感覚を使う

 第2段階「日時、季節の混乱」、「繰り返し動作」にいる人に効果的なテクニック

失語症、言語中枢に損傷ある人には、はい、いいえで答えられるクローズド・クエスチョンに切り替える。

この段階では、あっさり近距離を受け入れるようになり、もっと近づく必要がある。経験的エネルギーフィールド(他人を感じ認識する距離)は20cmだが、個人差有り。

わずかしか言葉による意志疎通をしない人には以下の非言語テクニックに焦点をあてる。

✔ ミラーリング;姿勢、身体の動き、顔の表情、口調、息遣い / 物真似とは違う。

✔ 真心を込めた深いアイコンタクト

✔ 穏やかなタッチング
 (それがふさわしいときに使うアンカードタッチ)

出処: 認知症の方とのコミュニケーション法「バリデーション」とは? | 介護の便利帖|あずみ苑-介護施設・有料老人ホーム レオパレス21グループ

✔ 相手の感情にトーンを合わせた、はっきりとした温かい口調。(㊟演技は不誠実な印象を与える)
どんな感情か観察し、それに合わせて(カリブレーション)気持ちを込め言葉にして伝える ⇒非言語的に感情を表出している人に有益な方法。

✔ 行動とニーズ/欲求を結びつける。言葉で意志疎通せず、動作でニーズを表現する。認知症のお年寄りに最も有効

✔ 音楽を使う。一緒に歌うのが一番よいコミュニケーションになる。

第3段階「繰り返し動作」にいる人に効果的なテクニック

さらに自分の中に引きこもっている方には、更に近づく必要有り、多くの場合気づいてもらうためにタッチングを要する。

第4段階「植物状態」にある人に効果的なテクニック

最も近寄る。タッチングが鍵となる。 アロマセラピー、マッサージ等。

 

共感とは、

興味を持つ、気の毒に思う、といったことではない。

その瞬間、相手が感じている気持ちを実際に自らも感じること、それが共感。

 

肯定的な声かけ

人間の基本的欲求を表現した人をバリデートする時は、相手の自尊心を支持するような声かけを。本当に思っていることを、お年寄りの自尊心が高まるようなことを

 ーすばらしいお母さんだったのですね
 ーずっと一生懸命働いてこられたのですね
 ーあなたは大変思いやりのある人なのですね
 ー今日はあなたに沢山のことを教えてもらいました

 

バリデーションのテクニックを用いるにあたって一般的な注意

f:id:masakahontoni:20200324135243j:plainあなたの感情を出した意見を言ったりしてもダメ。

目標は相手と接し、意志疎通し、信頼関係を築き、相手の世界を探索すること。

 

ーーーーーーーーーー

以下、巻末の「付録」部分から印象深かったものをあげておきます。 

■ 家族にわき起こってきた感情はセンタリング(集中)には大きな障害。嘆き、悲しみ、怒り、喜び、愛情などに対応する心の準備が必要となる。

■ 日記は、心の奥底に秘めている感情を外に吐き出すための効果的な道具。自分の感情にある距離をおき、視野を広げる事ができる。

「受容」とは、受け入れることが最も難しい考えの一つ。その人を治してあげることはできない、がそれでいい。(その)人がすぐによい形に変わる=効率的・効果的、ではない。ある瞬間、その魂を感じること、それこそが「うまくいく・成功」。

「共感」。長い間に築かれた家族のつながり・関係は、善意の妨げになる。若いときの役割・対立関係が過去からよみがえり、態度・行動に影響を及ぼす。家族がまず最初にしなければならぬことの一つは、審判を下すような態度を改めること。共感、とは相手のニーズ・感情・現実をそのまま体験することで、判断することではない「完璧な家族」が存在するのはTVの中だけ

■ 介護している家族は、肉体的に大変であるだけでなく、感情的にも大きな苦渋を負っている。イライラ、怒り、悲しみ、痛み、喪失感は日常茶飯事。そんな時;
 ✔ 自身の感情を認め、尊重する
 ✔ 認知症の家族の感情やニーズとあなたの感情やニーズは大きく違う。認知症の家族の感情・ニーズを認める
 ✔ バリデーションをする間、自分の感情・判断・心配を脇に置く方法を学ぶ
 ✔ 認知症の家族の個人的現実を探索する手がかりを、注意深く観察する方法を学ぶ
 ✔ あなたの感情を表現したり、経験を共有したり、新しい考えを得たりすることができる支援体制をつくる

■ バリデーションをする人は、その瞬間の相手をありのままに受け入れ、変えようとはしない認知症のお年寄りが「変わり」・「元に戻る」ことは期待できない基準が変わったのです。それはその人にある意味で別れを告げるようなもので、受容することは容易なことではない

■ 多くの家族は、”その人”が「現実に戻る」方がよいと考える。が、必ずしもそうとは言えない。それが認知症の人にどのような意味を持っているのか?

“その人”を「現実」に強く引き留めるものはなく、過去が強く引き戻すのです。私たちが大切と思うことが、必ずしも認知症の人にとって大切なものではない本人は、過去に残してきた気持ちを感じている。 

 

f:id:masakahontoni:20200311115443j:plain

バリデーションについては日本における協会組織が、こちらには「2018年4月をもって解散」、一方こちらには「2018年4月より協会代表を務めます」とあります。

代表者が代わると共に所在地が宮城県から鹿児島県に変わっただけなのか、組織の詳しい変遷については明確ではない。今一つ国内組織の状況が整然としていない印象も受け、関わる書籍の発刊も近年には行われていない。

但し、本元(米国)のバリデーション自体には学ぶ(=囓ってみる)意味が大いにあるように思えます。

f:id:masakahontoni:20200311115443j:plain

認知症ケアメソッドには、「バリデーション」、「パーソンセンタードケア」、「ユマニチュード」などがあるが、いずれのケアメソッドにおいても「人間の尊厳」を重視している。

<表出処;認知症のケアメソッド「バリデーション」「パーソンセンタードケア」「ユマニチュード」の文献検討によるメソッド比較(pdf)>

f:id:masakahontoni:20200319112017j:plain