それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

医師と面談(大腿骨骨折)・・・①

 

f:id:masakahontoni:20191202165013j:plainこの時間、この路線、

いつもの新幹線。

 

でも一つ違うことがある、

今日が平日ということだ。

 

3度目の骨折をして搬送されたN病院、そこに向かう為、今日この席に座っている。

 

『同じような気分にさせるのも忍びないが・・・
連絡しない、という選択肢はないので・・・』

 

と・・・かくかくしかじか・・・を妹に通知、

『またですか・・・繰り返しますね』

と、折り返された片言の”絶句”メール。

気持ちはわかる。

 

『悶々としたところで意味がない、そういう事ならと、また気合を入れて頑張るしかない。』

と返した。

 

そう、今朝は気合いでこの始発列車に乗り込んだ・・・

 

f:id:masakahontoni:20180906123454p:plain(ここから先は流れのままにいくしかないか・・・)

 

 

悟りを開いたかの如く装う”にわか坊主”よろしく、一人腕を組み平静を装う。

 

f:id:masakahontoni:20191202170219j:plainN病院は地域の急性期病院。個人病院ながらその区域で数十年間医療に携わっているらしい。

 

玄関を入るとすぐに待合室と受付があった。

設置された長椅子の数から 多くの外来患者を受け入れていることがわかる。

 

受付で入院手続き。

消耗品費用、食費、高額医療費等について説明を受ける。

 

意外にも、高額医療費制度のみならず、減免措置等々についてまで細かい説明があった。

3度目の骨折ともなると、似たような場面を否応もなく何度か経験しているが、過去公的・私的医療機関の窓口でそのような説明はスルーされることが多かった・・・。

整形外科フロアーに行きナースステーションで声をかける。

先に病室で面会を、と促された。

 

病室入ってすぐのベッド。

そこが母の「新たな仮の」住処。

f:id:masakahontoni:20191202163959j:plain上げられたリクライニングベッドの背に上半身を委ね、ぼーっと前方を見る母のうつろな視線・・・それが私の姿を捉えたようだ。

 

今日の声かけ第一声はいつも通りこれでいこう、とあらかじめ決めていた・・・

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plainやぁ!

 

 

f:id:masakahontoni:20180823153903p:plainあぁ、どうして私はここにいるのかねぇ。

 

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plain骨折したんだよ。

部屋で転倒、骨折したのは、ほら、ここ、足の付け根の大腿骨だって。

f:id:masakahontoni:20191211105914j:plainずいぶんと痛がっていたらしいよ。

救急車でここに運び込まれたんだよ。

 

f:id:masakahontoni:20180823153903p:plain部屋で・・・?

・・・覚えてないねぇ。

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plain母さんは痛みにすこぶる弱いからね。

痛い痛いで、他のことが全部頭から飛んでしまうんだね。

これまでもそうだった。

これで骨折も3度目だ。

 

f:id:masakahontoni:20180823153903p:plainえぇっ、3度???

 

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plainそうだよ、1度目は腕、2度目は年明けまもなく膝下の骨を折り髄内に金属を入れたままだ。

 

依然虚なまなざしのまま、母は首を傾げる・・・

 

f:id:masakahontoni:20180823153903p:plain・・・そうだったかねぇ。

 

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plain今度は大腿骨、足の付け根のところが折れたらしいよ。

今 勝手に動いたりすると大変なことになるからね。

絶対安静で頼みますよ。

 

f:id:masakahontoni:20180823153903p:plainそうなの?

べつに痛いところはないけどねぇ・・・おかしいね。

それに家のそばの砂利道でちょっと躓いただけでしょう?

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plainいや、部屋で転倒して骨折したんだよ。

痛みを感じないのは鎮痛剤が効いているからでしょう。

 

f:id:masakahontoni:20180823153903p:plain部屋?

・・・う〜ん・・・

 

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plainまぁ、折れてしまったものは仕方がない。

治療に専念して、お医者さん、看護師さんの言うことをよく聞いて・・・全てお任せするしかないんだよ。

 

f:id:masakahontoni:20180823153903p:plainう〜ん・・・

ここはいったい何処なんだい?

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plainN病院。

救急病院だよ。

救急車で搬送されたんだよ。

 

 

病室の入り口から看護師さんが顔を出す

 

f:id:masakahontoni:20191128150717j:plain真坂さん、それではこちらへどうぞ。

 

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plain

はい。

では、先生と話してくるから、しばらく待っててよ。

 

そう言い残し、母のいる病室を後にした。

 

 

ナースセンター横の部屋で主治医と面談。

 

f:id:masakahontoni:20191205161558j:plain無表情のままファイルにあるそれぞれのデーターを指でなぞりつつ、坦々と話は続く。

時折チラッと上目遣いにこちらに視線を投げ私の様を確かめる。

 

大筋はこれまで経験してきた類似の場面で説明されたことと同様。

が、こちらの医師は、それぞれの項目に一つ一つ説明を加えていく。

ポイント、要点だけ、詳しくは渡す書類を読んでね、的な、極めて事務的な面談が常と独り合点していた。

『あれこれ説明しても・・・こんな時に細々言っても混乱してしまうでしょう? 時間の余裕もないし詳しくは家に帰ってから落ち着いてこれを読んでね』という事なのだろう、と思うようにしていた。

 

が、こちらでは書類の「上から下まで」全て、もそもそと口籠るように、早口で読み上げながら、各項目の意味するところ、そう記されている所以、一つ一つに一言添えていく・・・。

 

- 医師と面談(大腿骨骨折)・・・②へつづく -