一月ほど前になろうか、それは土曜日の夕方。
明日は母を見舞いに施設へ行く日。
1週間は早い。あっという間に週末がやってくる。
特段の用事なき限り、早めに就寝というのにもだいぶ慣れた。
それでは早めに、と腰を上げたタイミングで振動が着信を知らせる。
施設長だ。
真坂さまですか?XXです。突然すみません。
明日はまたこちらにいらっしゃるご予定ですか?
・・・と言いますのも、急なご連絡になり申し訳ありませんが、経営母体の方から、当年秋より介護付き有料老人Hとなる旨の連絡がありました。
今すぐにということではありませんが、これまでの住宅型から介護付きへ体制が変わる事につきましてご説明させていただくお時間を頂戴したいと思うのですが、明日いらっしゃるのでしたらその際にお時間を頂いて、と思いまして・・・。
・・・そうなんですか・・・急なお話ですね。
はい、最後までこちらで、というご希望を持つ方も多く、そういったことに対応できるよう以前から認可を受けるべく手続きを進めていたようです。
正直、私にとっても青天の霹靂・・・ではあるのですが・・・。
明日はいつも通りお邪魔する予定です。
勝手を申し上げれば、部屋に母を見舞う前に、事務所の方で、お願いしたいと思うのですがいかがですか?
手元にバスの時刻表がないので不正確ですが、いずれにせよ1時間に1本、運行はあるはずなので、1時間ほどのお時間でよろしければ、その分早めに到着できるよう調整はつくと思います。
はい大丈夫です。そのお時間には事務所でお待ちするようにいたします。
で、どうなんでしょうか・・・
母の場合は自室にひきこもらせない為にも出来るだけデイサービスに、ということで介護サービスの限度枠いっぱい使っている現状なので、介護付き、となっても多分、月々の負担額に大きな差は出ないのかもしれません・・・
そうですね・・・
ただ、そうなりますと、介護付き、の形態となった場合・・・
これまでのようなデイサービスに通って、ということができなくなります。もちろん入浴の方もこの施設内にも浴場がありますのでそちらでとなります。ケアマネも居宅介護支援事業所のx xさんから、この施設内に着任するケアマネに変わります。
となりますと、施設内でレクリエーションをということになりますか? そうなりますと、どのようなレクを行なうか、というところ次第・・・
つまり、これまで外部のデイのお陰で日々特段大きな問題なく過ごすことができていた状態を、施設内レクとなった場合でも変わらず、となるのかどうか・・・でしょうか?
そうですね。特に通所の介護士さんたちはその道に長けた方が多くいらっしゃいます・・・。介護付きとなってこの施設でのレクも、時々に外出等野外レクも組むようにしたいとは思いますが・・・。
これは、このA施設がどうとか、今回の件とはまったく別に・・・
お母様の場合、毎日「初めてそこへ通うかのような」新たなお気持ちでデイに通われているので、そこで気持ちがリセットされるといいますか・・・
それがかえって毎日の気分転換にもなり、ご本人さまも楽しく日々過ごすことができる結果となっているように見えます。
希望される入居者の方のためにこれまでも施設内に併設のデイがありますが、あのような形でのレクを介護付きとなってからは対象を全入居者に対して行なうようなイメージでしょうか? 介護士さんも増員、ということになりますか?
はい、入所前にそちらのデイを見学頂いた際に紹介致しました介護士を中心にレクも色々考えていかなければ・・・と思っています。介護士さんも増えることになると思います。
これから準備をしてゆかねばなりませんが、まずは入居されている皆さんに介護付き老人Hとなることをお伝えして、今後どのような方向をお考えか、介護付きとなっても変わらずこの施設にとどまる、いや、それならば他の施設への転所を考える、等々皆様の思いを伺いたいと考えています。
なるほど。
ただ、そうは言いましても・・・
骨折でお世話になったK病院を経由して入所しておりますので、その系列の施設でまさにお隣にあるK病院のサポートをそのまま継続して受けられるなど大きなメリットを感じておりますし・・・
これがまた振り出しに戻って新しい施設で最初から仕切り直しとなると、それでなくとも、A施設入所時にもあったあの情緒不安定状態からまたやり直し、というのは避けたいところです。
ただ一方で、A施設に入所されている方々は穏やかで静かな人ばかりなので・・・。
賑やかな中に置かれた方が気が紛れやすいであろう母の場合、果たしてこれまでのような通所がなくなった場合どうなるのかは不安なところでもあります。
・・・そうですね。
それでは明日お伺いしますのでよろしくお願いします。1時間ほどの面談で足りますか?
はい、すでにこのお電話で色々お話しすることができましたので・・・明日はお待ち申し上げております。お気をつけていらしてくださいませ。
(大手企業体傘下の施設であればこういうこともないのかもしれないが・・・いや、むしろ逆にあったりもするのかな・・・?
唯一の不安は母の情緒に変化が出るか否かだけれど・・・。)
(これも、なんらかの必然性があるものと思うべきなのかな・・・
今でこそ肉体的に手取り足取りの補助・介助・介護が求められる状態でないけれど、それが未来永劫続くわけでもないし・・・
そういう事態を念頭にしての一つの過程、これも天の示す道ととらえ、運命に委ねてみる・・・?
もう一度適当な施設探しから始める、というのは、むしろリスクが大きいかもしれないな。)
青天の霹靂・・・②へつづく