昨年末、母の奥歯が抜け落ちた。
秋も終わる頃から奥歯がぐらぐらすると言っていた。痛いわけでもないので放っておいたら自然に抜けた、という。
かかりつけの歯科医はなんと言っているのか尋ねるが釈然としない。覚えていないのか、そもそも原因について かかりつけ医と話していないのか、それもわからない。
高齢になれば老衰の一つとして抜け落ちるのかな?と 私も当初 そう思っていた。
今回、それも退院→施設入所目前に・・・、片側の奥歯がぐらぐらすると訴え始めた母。
歳だから歯が抜け始める、のではなく、歯周病ではないのか?
そういえばよく歯茎が痛いので薬を塗っている、等とここ数年 時として母が言っていたのを思い出した。
歯磨きはしっかりしていたし、歯間ブラシまで使っているのを見た事もある。
それでも、結局は歯が抜けてしまうところまで(歯周病とすれば、だが)進行してしまうのか?
国民の8割が患っているという歯周病・・・人ごとではない。確率から言えば、私自身 歯周病であったとしてもおかしくない確率だ。
しかも最近は歯周病と認知症の因果関係まで取り沙汰されている世の中。
これは自らの問題でもある。
が、金歯が1本・・・今も口腔内で燦然と輝いてはいる。永久歯に生え替わって1週間も経たぬ頃、庭で転け、縁石に歯をぶつけ一部が欠け落ちた。
せっかく生えた永久歯、この世にその姿を留めたのはわずかに数日、それはあえなく1週間で金歯に変身したというわけだ。
それ以来、歯科医の門をくぐったのは覚えている限りでは歯科検診の1~2回、一番最近でも10年以上前のことだ。
元来健康オタク気味であることも手伝い、母の「歯がぐらつく話」をきっかけに、歯周病と認知症の話が脳から消えず、歯磨き粉を変えるに至る。長らく使い続けてきたGAMから、歯周病と言えば必ず名前の挙がるアセス、そして最近?発売されたデントヘルスというのを今は使い分けている。(デントヘルスは研磨剤入りのものを、アセスは無しのもの)
歯周病、歯槽膿漏の自覚はないが より薬効の「ありそう」なものに変え精神的安定を図った、とも言える。
(以降 数ヶ月経過しているが、特段変化があったかというと 自覚できるようなものは何もない。)
そんな折も折、母の「歯がぐらつく」騒動パート2で、自らの胸中にあった「歯の健康」への不安がふたたび頭を持ち上げてきた。
思い立ったが吉日。この前も、久しぶりに眼科検診をし、結果それなりの問題があること発覚している。悩むより動いた方が早い。少なくとも次にどうするかがわかってくるからだ、次の選択肢の範囲を狭めることができる、というのが私なりの屁理屈である。
よし、これからは歯も定期検診だ、と近隣の歯科医を検索し予約を入れた。歯科医の検索サイトのようなものがあり、予約もそこから入れること自体 恥ずかしながら今回初めて知った。「町の歯医者さん」のような開業医には便利なシステムなのだろう。
予約入れたらすぐに確認くるものとばかり思っていたが、そんなこともなくその日は暮れた。
翌朝「これはアナタから確認の電話をかけてね」という意味か?それなら仕方ない電話でも・・・と思い始めた頃、当の歯科医院から電話。
それも、その時間は空いていないという。で、1週間後なら予約を入れられると。
サイトに公開されている情報と全く違うその説明に、これはご縁がなかったものと思い、ではまたあらためて、と体のいい断り文句と共に電話を切った。
思い立ったが吉日。今度は、直接、第2候補の歯科医へ電話を入れ予約を入れた。どうやら夫妻で営んでいるこぢんまりとした「歯医者さん」らしい。
歯医者というといかにも「儲かってます」風な造りの建屋を想像してしまう(そういう想像自体、今時の歯科医を知らない者の偏見かもしれない)が、予約を入れたその医院はそれとは対極にあるようだ。
全くの民家の玄関といった所から入る、ひっそりと周りの民家に違和感なく溶け込み、それと気づかず通り過ぎてしまいそうなたたずまい。
予約した真坂です。
玄関入るとすぐ横に受付あり 年の頃60代といった方が座っていた。多分この方が奥様なのだろう。
スリッパに履き替えると目の前に申し訳程度におかれたソファーがある。4人も座れば一杯だろうが、予約制ならそれで十分か。
検診をお願いしたい旨 電話予約の際に伝えてあるが、指示されるがまま問診票等記入し奥様、いや受付の方に提出。
問診票の中に、歯磨きをいつ行うかという問いあり、起床後、就寝前、毎食後、の3択となっていた。
起床後、就寝前に✔、毎食後に△を入れ、「△は気になったときのみ時々に、という意味です」と提出時に申し添えた。すると受付嬢、いや60代とおぼしき其の方が、
そりゃぁそうよね。毎食後こまめにいちいち磨く人なんてそうはいませんよねぇ
と笑いなが応えた。
このあたりから、幼き頃から私が何の根拠もないまま心に宿していた「歯医者さんへのイメージ」がガラガラと崩れ始める。
突っ込まれると返さずにはいられない癖がむずむずし始める・・・
そうそう、芸能人のようにはなかなかいきませんね・・・
あの人達はもらうもんもらってるんだからそれでいいのよ
・・・
私の負けだ。言葉につまり 苦笑いしか返せなかった。
奥から見たところ60~70といった風のご主人と思われる方が現れ、こちらへどうぞ、と声をかけられる。
こじんまりとした部屋にデンタルチェア一つ。
遠くで暮らす年老いた親の歯が抜け落ちるのを見て、あれだけきちんと磨いていたのに歯周病になるんだと思ったら、自分の歯も心配になりまして・・・。最近眼の定期検診も始めたので、歯科検診もこれからはと思い立ちました。
そうですか。定期検診なら半年に1回ぐらいでいいでしょう。
そうねぇ、誕生日に定期検診をする人もいますよ。誕生日なら検診を忘れず受けられるしね。でも、自分の誕生日も忘れちゃった、という人だとだめよねぇ〜あははは。
・・・。
デンタルチェアーに座る。
何十年ぶりに座るこの感触、ああそうそう、ここにコップがあった、そうそう、水が自動で入るんだよね・・・等と幼き頃の思い出の場所に観光に来たかのように なつかしい記憶が断片的に浮かぶ。
それでは、とそれぞれの歯をチェックしちょこちょことメモをとるご主人、いや、歯科医師。
歯茎に問題はなさそうですね・・・
・・・この歯は随分昔のものですかね。最近はこういう風にはかぶせないんだよね。
それは永久歯になってすぐ 転んで欠けてしまったんです
あぁ、小さいときは受け身がとれないからねぇ。転倒したとき手が出なくてもろに歯にあたったりして・・・わかるわかる。
傍らですかさず話を差し込んでくる。気がつけば、歯科助手と化した奥様が傍らに。
メモを置きおもむろに歯科医が発したその言葉に心底驚いた。
歯科検診 ②へつづく