それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

歯がグラグラ

 

f:id:masakahontoni:20190513152818j:plain小刻みな振動が着信を知らせる。K病院からだ。

 

 

f:id:masakahontoni:20190315113047j:plain真坂さんですか?
K病院看護師の〇〇です。
お母様が、右上奥の歯1本がぐらついて痛いというので、歯科医の往診診療を頼みたいと思うのですがよろしいでしょうか?

 

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わかりました。よろしくお願いします。

 

K病院に転院した時間帯が 昼近かったということもあり、さっそく昼食を食した母に、どうだった?と聞いた時、右上の歯がぐらついているので食べずらかった、と漏らしていたのを思い出した。


後日見舞った時その後の経過を確かめたが、通常の食事で咀嚼に問題ないような返事だった・・・


ぐらつきが大きくなったということなのか?

これまでは痛くなかったのだろうか?

 

f:id:masakahontoni:20190513153552j:plain母の症状については謎の部分が多い。

左奥も3本が昨年末すでに抜け落ちているが、その原因はなんなのか?母に聞いても、わからない・・・それ即ち医師に言われたことを覚えていない、ということなのか?


痛みなど具体的な違和感をまさに感じたとき、症状を訴えるが、一旦表立った症状が治ると(それが薬剤投与による一時的なものであったとしても)、もう治ったと安堵し、その記憶自体が薄れる。


そんなタイミングで私がどう最近?と尋ねると、なんともないね、と応える。

そんなことではないのか? そういったことを繰り返しながら、根本的な病因に対する処置が取られることなく、見えないところで悪化が進行していく=次々と新たに歯が抜け落ちていく、ということではないのか?


そもそも論を今更言ったところで当の本人にとっては時既に遅しだが、歯周病に対する取り組みはできるだけ早いうちに、シルバー世代に突入する前に、とよく言われる。

菌が一旦奥深く潜り込んでしまってからいくら歯を磨いたところで・・・という事だ。


30代の日本人の8割が歯周病と言われ、最近ではこの歯周病とアルツハイマー病との関連を指摘する記事も目につく。

 

近年、歯周病とアルツハイマー型認知症との関連性が指摘されている。どうして口の中の病気である歯周病がアルツハイマーと関係しているのか。だとすれば、予防はいつ頃から有効なのか、歯科医師の立場から解説する。

出処: ASCII.jp:歯周病が認知症に関与しているという説は本当か

 

f:id:masakahontoni:20190514152645j:plainそういうこともあってか、巷では歯磨き粉の新製品が続々と登場している。歯周病を気にする人が増えた、ということなのだろう。

かくいう私も「流行に乗り遅れまいと」2種の歯磨き粉を使っている。私には、行きつけの歯科医というものがないので、近々定期検診するに適当な歯科を見つけるつもり。


老衰で歯が抜け落ちる?・・・実のところ歯の抜け落ちる原因の多くは歯周病というのが一般的なのだろうが、当の担当医に直接尋ねるしか真実を知るすべはない。同居家族なら容易いことなのかも知れないが、遠距離となるとその分謎の部分が増える・・・。

 

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時として頭をよぎるのは、家族とかかりつけ医、担当看護師、介護士との情報共有がもっとあってもいいのかなという思い。

医師が診療時に所見など横のパソコンに打ち込んでいるのを見かけるが、差し支えのないところだけでもネット上で共有できないものだろうか?

デジタルで記録を残している以上、可能な気がするが・・・カルテの一部共有は無理としても、デイサービスにある連絡帳のようなものがネット上で情報の送受が双方向でできたらいいのに・・・と思う。

 

あらかじめ双方向でやり取りすることで、高齢者当人に説明できないところを、見守る家族が担当医、看護師、介護士に より明確に知らせておくこともできるはず。場合によっては当人の目の前では言いかねることも躊躇わず明かすこともできる。

 

数日後の日曜日、母を病室に見舞う前にナースステーションに立ち寄った。

 

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真坂です。母がお世話になります。先日歯がぐらぐらして痛いので往診を頼みたいのでと電話を頂いたのですが・・・。

 

f:id:masakahontoni:20190513151751j:plain今はもう痛くないそうです。今度は膝が痛いと言っています。

 

ナースステーション内を仕切った小部屋状の場所で談笑していた数人の看護師さんのうち一人がぶっきらぼうに応えた。

そばに控えた一回りほど若手の看護師さんが補足するように、

 

f:id:masakahontoni:20190513152016j:plain最初は鎮痛剤を服用してもらい痛みを抑えていましたが、今は服用していません。痛みももうないようです。

 

膝が痛む、というのは元々変形性膝関節症なので仕方ないところだろう。車椅子から2足歩行に移れば、当然負荷が膝にかかるので持病が表に出てきたということかもしれない。

それにしても入所の日が目前に迫るこのタイミングでなぜ次から次へと取り巻く環境に変化が起きるのか不思議だ。

そして、この話には後日談がある。それ即ちまさに入所目前での出来事になる・・・。

 

 

f:id:masakahontoni:20190513152818j:plainまた着信だ。K病院からだ。声からしてあの「ぶっきらぼう」な看護師さんに間違い無い、直ぐにそうわかった。

 

 

f:id:masakahontoni:20190513151751j:plainK病院です。ぐらついている歯のことですが・・・だいぶぐらつきが大きくなり、まもなく抜け落ちそうな状態で・・・もう痛みもないようなので、往診医も抜いてしまった方が無難だからと何度も勧めたのですが拒否されまして。

先程私からも 寝てるうちに抜けて飲み込んだり、気管につかえたりすると危ないからと何度も説得したのですが・・・あんたに言われる筋合いはない、と怒られました。

医師の方でも、昔ならともかく、今はこういう時代だから本人の意思を尊重するしかない。医師としては伝えるべきことは伝えたのでということになりました。

そういうことになりました、ということをご連絡しておく必要があると思いお電話いたしました。

 

f:id:masakahontoni:20180823154054p:plainそうですか、母が失礼なことを言ってすみません。険悪な雰囲気になってしまいましたね。

 

f:id:masakahontoni:20190513151751j:plainいえ、大丈夫です。何日か経てばどうせ本人も直ぐに忘れてしまうことですし。

 

 

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わかりました、今後ともよろしくお願いします。

 

 

確かに今時の日本は誰もがすぐに「責任の所在」を求める。医師が先々のリスクを念頭に抜歯を勧めるのは当然と思うし、抜歯しなかったことで起こりうるリスクについて「責任の所在」を明らかにしておく、という行動に反発する感情は全くない。

 

ただ・・・すぐに忘れるかなぁ・・・認知症でも楽しかったこと、嫌だったことは意外と記憶にとどまる、というのはよくある話だと思うけど・・・。

(一口に認知症といっても人それぞれ。様々な”タイプ/BPSD”の患者さんに日々接している看護師さんからすれば、「直ぐに忘れてしまいたい」と思うのは看護師さんの方・・・というケースもあるのかもしれない・・・)