それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

胸の内・・・①

朝一番に家を出る

実家へ寄り、郵便物整理、通水、換気など建屋のメンテをざっとこなす

K病院へ母を見舞う(様子をうかがう)

1時間程で帰途につく

 

そろそろ慣れてきたとはいえ、めまぐるしさに変わりは無い。先の見通しが立ったわけでもない。

介護保険・区分変更の調査面接も終え、遠からず結果が出る。その結果が出次第 施設入所に向けて動き出さねばならない。

 

そして、その目処が立つまでは、と先延ばしにしていることもある。

家の維持・管理・防犯、整理(処分ではない)、そして財産管理(何がどうなっているかの整理と言うべきか)。

 

先は見えない。

 

いずれにせよ、地域包括ケア病棟にいられるのは原則60日間。まもなく”その期限”が到来する。

 

最近は母を見舞う度に会話にそれとなくその話を織り交ぜるようにしている。

 

f:id:masakahontoni:20190419145927j:plainその日病室を訪ねると、母はとなりのあの方(Sさんと)ベッドに横たわったまま歓談中。

手を頭の後ろに組み、足は立て膝、そこへもう片方の足を乗せ・・・なんともイイ感じ?にデカい態度の入院患者、と言えなくもないが・・・

入院生活にもすっかり慣れたということか。

 

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(こういう時期が危ないんだよな・・・油断して転倒しないでくれよ)

 

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やぁ

 

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あら、よくきたねぇ。

 

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こんにちは、いつもお世話になっております。

 

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とんでもありません、いつも母の相手をして下さり有り難うございます。

 

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いいえぇ、私の方こそ、こんなクッションを頂いて、助かっています。

 

f:id:masakahontoni:20190419151424j:plainと指さしたのは車椅子の上に敷く座布団。母に渡したものとは異なり布製のもの。

ご家族の方がそろえて下さったのだろう。そこに至る過程で母が口を挟んだかどうかは知るよしもない。

そしてSさんは、その座布団が自らの家族がそろえたものということを記憶しておらず、”母から貰った”という認識になっているのに違いない、と合点がいった。

でも、そんな謎解きなどはどうでもいい。

Sさんがその座布団で楽をしている、それで幸せなら、それでいいのだ。

 

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よかったですね!ちょっとまた話し声でうるさくなりますけど、失礼します。

 

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いいえ、どうぞどうぞ

 

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この前来てから1週間経つけど、どう?足の調子は。

 

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特に問題ないよ、ほら・・・でもこの辺がちょっとピリピリするかな・・・あまり掻いたらいけないと看護師さんがこれ(ガーゼ)を貼ったんだよ。

 

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駄目だよ、勝手に触っては。いいかい、手術してまだ何ヶ月も経っているわけではないんだよ。

 

f:id:masakahontoni:20190419131304j:plainそこへ、看護師さんとリハビリ担当の方が訪れ サインが欲しいと・・・リハビリが別の段階に移ったらしい。見回すと車椅子が置いてあったところに歩行補助器がある。

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2足歩行のリハビリに入ったんですね。血圧が高いので、と以前聞いていましたが・・・。

 

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現在は血圧を下げるお薬を飲んで頂いています。170以上あった血圧も140程に落ち着いていますので問題ありません。

 

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そうですか。ただ、母はすっかり治ったような気分でいるようです・・・

 

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そうですね・・・時々ちょっとした短いところ、ベッドから壁際まで移動するときなど、つい補助器を使うことなく歩いてしまうことがあり、不用意に動き出したりすると危険だと看護師さんから注意を受けることもあるようです。

 

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ご心配おかけして済みません。

 

看護師さん達が去った後、「いつもの話」を「いつもの写真」を見せながら繰り返す。

 

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f:id:masakahontoni:20190221174424j:plainほら、このレントゲン写真を見てごらん。足の太い方の骨の髄に金属が入ったままなんだよ。骨折部分が完治したから歩けるようになったわけではないんだよ。単に金属で支えられているだけ。

それが今度骨折したら・・・この金属が曲がってしまったら・・・大変なことになる。

私は足に障害があるんだという自覚を持って欲しいんだよ。看護師さんに言われたこと、注意されたことを忘れては駄目だよ。

 

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そうかぁ。そうだよねぇ、わかったよ。

 

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でも、このK病院に転院して ここのところ確かに顔色はよくなったね。

 

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そうかい!?

 

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家で引きこもっていたときは青白い顔をしていたからねぇ。やはり3度3度栄養士管理のバランスのとれた食事をとっているからだね。それと病院というこの環境も幸いしていると思うよ。

隙間風が入るような木造のだだっ広い中、独りコタツで丸くなるより、こういう構造の中で冷暖房完備の今の方がいいはずだよ。それに、団体生活だからね、自ずから人と接触するし、会話もする。こんな素晴らしい脳活はないわけだ。

家にいた頃は引き籠もり、隣近所も皆さん高齢で引き籠もり、何十年と顔見知りで偶にあっても”いつもの会話”しかしない。それでは何の脳活にもならないんだよ。

 

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確かに。

 

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昼間はコタツでウトウトゴロゴロ、夜は夜更かしでああでもないこうでもないと悩む。風で家が軋めば”誰かいるんじゃないか”と心配し、表で音がすれば”泥棒じゃないか”と気に病む。

 

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昔は遅くまで起きていてなんともなかったんだけどねぇ。その方が集中できたしねぇ。

 

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女学校時代と比べても仕方がないよ。自分の年齢を考えないと。年齢が全く違うでしょう?

 

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結局意識がもうろうとしてしまう。挙げ句の果てに、夜中10分おきに妹の家に電話をかけ”結婚はいつするんだ”と繰り返す、側にいる旦那さんはどう思うかな?

そして、この前息子と主人がいたはずなのにいつの間にかいなくなったと警察に電話して捜索願を出す・・・

 

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いやぁ覚えてないねぇ・・・そうなことしてたのかねぇ・・・まるでキチガイだね。

 

 

胸の内・・・②へ続く