それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

暗中模索

その晩なかなか寝付けずにいた私はベッドの中でぼーっとしながらゆうちょのことを思い浮かべていた。

ないものはないので、キャッシュカードはとうに諦め、いよいよ委任状の出番かなと、サイトにある書式を眺めたり、関連情報を検索していたとき・・・ハッとする情報に行き当たった。

 

ゆうちょのATMでの入出金はいわゆる一般の銀行とは違う・・・。

 

いやぁ、これは盲点だった。急に目が冴えた。起き上がり、急ぎデスクに向かう。実家から引き上げてきたゆうちょの通帳をめくる。

 

ああ〜

 

私は銀行が好きではない。銀行が好きだという人もいないだろうが。特に苦痛なのが窓口取引で、ATMもメインバンク以外ほとんど利用しない。

一般銀行のATMでは、通帳の有無に関わらず、キャッシュカードが必須と思うが、ゆうちょでは「通帳の種類によっては」・・・キャッシュカードを持参しなくとも、通帳と暗証番号だけで引き出すことができるらしい。

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ぱっちり開いた目で深夜のデスクで私が確認したのは通帳のこの部分だ。(ゆうちょのサイトにある画像を転用)

 

 

ああ〜


これなら、キャッシュカードが無くともATMでの引き出しに問題ない、委任状を考える必要もないかもしれない。

実際大丈夫か、今度帰省した際、確かめてみよう。

 

 

ーーー翌日ーーー

 

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もしもし?真坂さんですか?S病院です。

転院先の調整を始めておりますが、第1希望のR病院は病床がいっぱいで、順番待ちの方が10名以上いらっしゃるようです。そこで、第2希望のK病院に問い合わせ中です。K病院では、ご家族と面談しご本人のこと今後のことなどお話を聞いた上で最終回答する形を取っています。つきましては、真坂様の方で直接K病院の担当者と面会予定について打ち合わせをしていただきたいと思います。

 

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わかりました。

 

そんな気がしていた。週刊東洋経済の記事を切っ掛けに、実家のある地域が急性期病棟の数に比べ回復期リハビリ病棟が少ない場所と知ってから。

R病院は実家のある地域内にあるその”数少ない回復期リハビリ病棟”。おそらく、同区域で急性期病棟に搬送された患者がまず希望転院先とする病院なのだろうと踏んでいた。

一方で、院内の日常生活そのものがリハビリ主体という 回復期リハビリ病棟が、果たして母に適当な環境なのか、いや、予想外に母が奮起するきっかけとなるのか、そこに不安を感じていた。

K病院は地域包括ケア病棟に属し、回復期リハビリ病棟に比べればリハビリ比重が軽い。R病院の認知症治療施設は(外から眺めるに)魅力的だが、K病院にも(外から眺めるに)物忘れ外来が設置されその点の対応があるように見える。

 


<K病院の担当者に電話>

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現在S病院で母がお世話になっています真坂です。転院の件で連絡を取るよう指示を受けお電話しました。

 

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ありがとうございます。すでにお聞き及びかと思いますが、当病院では転院を希望される患者様のご家族の方とまず面会させていただきお話を伺った後、受け入れについて検討させていただいております。つきましては、ご都合のよろしい時、そのような時間を作っていただけたら助かります。遠方にお住まいと伺っておりますので、大変かとは思いますが・・・

 

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わかりました。S病院からもそのように伺っておりましたので、お電話する前に検討致しました。✖️日の午前中のご都合はいかがでしょうか?


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そうですか。え〜・・・それではですね・・・


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✖️日では遅いでしょうか? 面会の日取りが遅い分、転院がかなわないとなると困ってしまいますが・・・


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いいえ、むしろ早いくらいです。ただ、現在空き病床がない状況なので面会の日取りが早かったから転院予定日が早くなる、とはなりません。多分、1週間もしくはもう少々お待ちいただくことになるかもしれません。

それでは、✖️日午前中にお越しいただくということでよろしいでしょうか?その際に、お母様の保険証を持参してください。

 

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はい、それではその時間にお伺い致します。保険証は母が持っていますので、手元にある介護保険証を代わりに持参します。

 

K病院への電話後、S病院担当者、包括さん宛に事の次第をメール、コピーを妹に回覧した。

 

となれば、k病院での面談に帰省する折、通帳と暗証番号で問題なく引き出しできるか、うろ覚えの暗証番号が正しいか、郷里のゆうちょATMで試してみよう。

郷里のATMでなくとも、近隣のATMで試すことはできる。が、そこには変にこだわりたかった。

通帳にある資金は母の資産だ。その資産がたとえ1円でも母の居住地域外で引き出されたという記録を通帳に、あるいはどこぞのデーター上に残したくなかった。

今、真坂家に兄妹間の確執などないし、そんなものは御免被りたい、と思っているが、そのほころびの起因(となり得る・なり得ないに関わらず)につながりかねないことは何一つ行こなわない、そう決めているので。(税務署対策含め、なり得るなり得ないによらず、微に入り細に入り、疑わしきは行わずの精神だ)。

 

ーーー面談@K病院 前日ーーー

K病院での面談前日、包括さんから電話。察するに転院がそう遠くない日になりそうだと踏んだのだろう・・・


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介護保険認定についてですが、区分変更申請を行う必要があります。変更申請は包括支援センターの方で代理申請ができますので、介護保険証の方をこちら預からせて下さい。郵送でも結構です。


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それではできるだけ早くそちらへ送るようにします。

 

ーーー面談@K病院 当日ーーー

 

S病院とK病院は、同じバス会社の同じ路線上、そして両病院はさほど離れていない。ただしこの路線、1時間に1本あれば御の字という不便さがある。地方に行けば行くほど公共交通機関網の発達など望むべくもないのだろうから仕方のないことかもしれない。バスがあるだけいいじゃないか、そう思うべきなのだろう。

約束より30分ほど早く最寄りバス停着。バス停こそバイパス道路沿いだが、脇道に入れば民家しかない住宅地。ここのウリは騒音とは無縁の、静けさかな、と感じた。療養目的ならこういう環境の方が適しているのかもしれない。

そんな民家の並ぶ間の細道を抜けていくとすぐに看板が目に入りそこを折れると敷地に入る。玄関はこじんまりとしている。車椅子用にスロープ状になった通路向こうに受付があった。

規模的には救急搬送されたS病院とは比べるべくもない。こじんまりとし建屋も古い印象だ。

名前を告げ、側のソファに座り待っているとほどなく担当の方が現れた。別室に案内され名刺を頂いた。社会福祉士とある。

私から伝えた事も、先方から聞かれた事も、ほとんどはこれまで幾度となく、入院先でことある度に医師、もしくは看護師さんとの間で繰り返されてきたこと;


私から伝えたこと

  • ここに至るまでの流れ、母の病歴、特に、骨折、認知症
  • 今後どうしたいと考えているか


聞かれたこと

  • 母の持病有無、認知症の程度
  • 延命治療についての私の考え方
  • 不測の事態、もしくは緊急時、救急時の転院の可能性
  • S病院における母の現状(どの程度のリハビリを行い始めているか、用足しは今どのような状態かなど)


前後の話から、”不測の事態”がどこまでを意味するのかはピンときた。単に容体急変時ということだけではなく、例えば認知症の症状が手に負えなくなった場合、ということだ。

昨年読んだ認知症関連本の中で最も印象に残った「認知症 医療の限界、ケアの可能性」の中に現場における医療が今までそして現在どのようになっているか詳しく書いてあった。要は、精神病院への転院をも含むということだ。

母のストーカーのような電話攻撃、そして今回の骨折入院、そしてS病院入院直後は家へ帰ると看護士さんを困らせたこと、「ちょっとした漢方など処方しています」というS病院で今は落ち着き、夕暮れ症候群を思わせる問題がなくなったこと、一軒家で独り住まいより安心している風があること、全てを説明し、病院・施設で的確な処置をしてもらうことでこうも変わるのかと正直驚いていることも合わせて伝えた。

少なくとも現在、「手に負えない」「言葉が通じない」「不測の事態」といった問題が無いことはしっかり担当の方に伝わったと思う。


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早ければ、1週間ほど、遅くてもそこから遠くない日に転院となります。日付が決まりましたらS病院担当者を通じお知らせします。


と聞くに及び、転院先がK病院となることはほぼ決まった、と感じた。

入院に関わる費用、支払い、同意書、保証人云々の説明を受け、現在要支援の介護保健の変更申請について話をし、面談終了。

その後、一般病棟のフロアを案内され中の様子について説明を受けた。

K病院は40年ほど前に建てられた療養型中堅病院。その分建屋は古く、当たり前だがS病院とは大きく異なる。照明も明るくない。例えれば、S病院がLED照明、このK病院は蛍光灯照明といったところか。

そして、S病院ほど看護師さんがいるわけではない(これはS病院の方が特殊だった)。ただ、老健、そしてグループホームが併設されていることのほうが、私には興味深い特徴だ。

母がお世話になるのは その地域包括ケア病棟で、入院期間は原則60日間。2ヶ月などあっという間、程なくすれば今度はまた次の移動先の算段をする必要がある。

f:id:masakahontoni:20190308181132j:plainそう、転院先ほぼ決まり!よかった!で終わりにはならない。

相変わらず掴み所のない・消化不良のような日々が続きそうだ。