それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

いよいよ(手術)

手術当日。予定通り昼ごろに病院に到着。まずは、X日以降に、と聞いていた入院費用請求書が発行されているかチェック。入院が当月早々ということで、まだ発行されていないという。それでは、発行された際に、とお願いし病室へ向かった。

 

母の様子は見たところいつも通り。

午後には手術とわかっているのだろうか?

でも、それを母に確かめようとは思わない。

そのまま静かに、手術という山を越えて欲しい。

 

例のごとく、あることないこと話を繰り返し、母がいつも携行しているバッグ/貴重品袋を預かった。

 

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これは持ち込めないからね。明日又くるから、その時 手渡すよ。目が覚めてバッグがない!なんて大騒ぎするなよ。

 

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大丈夫

 

 

そこに看護師さんが現れ、私は談話室に移動。希望転院先の件について話し合う。

 

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如何ですか?転院先希望は決まりましたか?

 

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そうですね・・・身内でも話してみたのですが、地理的条件と合わせ、認知症のケアもしていただけそうなところがいいのでは、という点で、第一希望はR病院で意見がまとまりました。

同じ理由で、K病院、D病院がよいのではないかと・・・あとはこの場でどちらを2番目にするか私が決めることになっています。どちらがいい悪い、というお話は頂けないと思いますので、両病院で何か違う点などあればアドバイス欲しいのですが・・・。

 

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そうですね・・・。距離的にはD病院が一番離れてはいますね。施設的には共にしっかり整った病院だと思います。

ただ、認知症に対するケア、とのお話ですが、病院によっては、入院患者の病室で合わせて診断ということでなく、認知症の治療については外来からあらためてお願いします、と指示されることもあります。それはここの病院で違うと思いますので、実際に入院された際、確認をお願いします。

 

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そうですか。それでは、K病院を第2希望、D病院を第3希望にします。

 

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わかりました。それと第1希望のR病院ですが、個室の多い病院と聞いておりますが、個室、相部屋、の希望はありますか? 仮に個室しか空いてなかった場合、どうされますか? 個室の場合一日あたり4千円かかります。

 

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つまり、1割負担の後期高齢者だと入院費用が最大6万弱だったかと思いますが、それにプラス4千円x日数、と食費、ということになりますか?

 

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はい、そうなります。

 

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どうなんでしょうか・・・個室で一人天井をただ見続けているような環境では、更に認知症が進んでしまうような気がします。逆に相部屋の方が色々刺激があっていいのではないか・・・そんな気がします。金額もそうですが、個室の分余計に費やして認知症悪化では、意味がないように思いますので、あくまでも相部屋希望でお願いします。

 

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わかりました。仮にR病院に個室しか空いていなかった場合は、第2希望のK病院の方をあたらせて頂きます。

それでは、手術後1週間程経たタイミングで、各病院への接触を開始します。あとは、空いているとなればすぐにでも転院をお考え頂かないと、すぐに他の方が入られてしまうといったこともありますので、その点あらかじめご理解を頂きたいと思います。

 

 

看護師さんに希望を伝えた後、母の病室へ戻る。

 

そこには、準備万端整え、手術室に運び込まれるのを待つ母が横たわっている。昼時ではあるが、手術当日につき食事は一切無し。勿論朝食も今日はとっていない。

あの母が取り乱す風もなく一見落ち着いているのが解せないが、それでも内心ほっとしながら「有る事無い事話パート2」で場を持たせようとひたすら務める。

 

早くとも13時半ごろから、と言われていた時刻も過ぎ、会話も途切れがちとなり、どうしたものかと思い始めた14時前、

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それではまいりましょうかぁ?

 

と看護師さんが二人で迎えに来る。

ベッドごとそのまま移動。

 

f:id:masakahontoni:20190218165633j:plain前回は搬送先救急病院ではなく、転院先中堅病院での手術だったが、あの時は手術室のある階へ向かうエレベーター前で母を見送った。

今回は共々 手術室のあるフロアまで移動するようだ。そしてTVドラマなどでよく見かける あの手術室の入り口ドア前に到着。


事ここに至り、母が不安を表に出し訴え始める

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どうしよう・・・

 

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大丈夫。寝てるうちに終わること。目が覚めたらもう済んでいるから。

 


看護師が

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それではここまでで・・・

 

と告げ、私の方へ目を向ける。

 

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ここで何を言え、と言うのか?


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まぁ、好きなショートケーキを食べる夢でも見ていなよ。ケーキを満喫した頃にはもう完了しているよ。


看護師共々、苦笑いを浮かべ、母はドアの向こうへ消えた。


と、うち一人の看護師がすぐに出てきて、

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それでは、病室、もしくはその階にある談話室でお待ちください。手術が終わりましたら、ナースセンターを通じお知らせします。


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1時間ぐらいで終わりますか?


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いえいえ、もっとかかると思います。


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2時間ぐらいでしょうか?


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そうですね。手術完了の知らせがありましたら、再びこのフロアに来ていただき、このインターホンを鳴らしてください。その後のことは、指示に従ってください。なお、マスク着用を忘れないようにしてください。


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わかりました。よろしくお願いします。


私は談話室へ戻った。

 

 

談話室、と名前こそ付いているが、誰も談話などしちゃいない。いや、人自体がいない。ガランとしている。さして広くもない部屋が、誰も居ないと余計ガランとして見える。

窓から外を眺めると、どんよりと重なり合った雲。14時を回り、傾き始めた日の光が漏れ差し込んで眩しい。窓を背にして側にある椅子に腰を下ろした。


まずは、妹にメール。

 

f:id:masakahontoni:20190218171516j:plain14時、手術開始。完了後また知らせます。

 

           - 続く-