それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

あれも、これも、一気に(第一弾)

まんじりともせず、寒々とした実家での一泊を終え駅に向かった私は、出会い頭の電車に乗り、新幹線を乗り継ぎ、帰宅の途についた。

 

f:id:masakahontoni:20190211174739j:plain車中頭をよぎったのは、家の片付け。


母が一念発起しあの家に帰る日が来るのか、やはりそんなことはないのかわからぬが、あれやこれやよくわからない物でいっぱいになったあの家を片付けておく、いや、片付け始める必要がある、という問題が現実化してきた。


あれは勿体無い、これも勿体無い、とあらゆる粗品、景品の類含め、押入れという押入れに物が詰まっている。幸い、あの冷凍庫と違い、腐りはしないが、片付けとなると大ごとだ。


整理屋のような便利屋稼業が賑わっていると番組で見たことがある。手っ取り早く業者に頼んで、という需要が多いとも聞く。誰も住まなくなった家を空き家のままにはできない。それは遺品整理に限ったことでは無い、真坂家のごとく先々誰もすまないであろう家然りだ。日本国中で問題になっている空き家問題、それがとうとう私の前に姿を現し始めてきた。


自らの手でなんとかできないものか、スタート地点はまずはそこから、と思い適当な関連書籍を見繕い、新幹線の中から注文を入れた。

 

2度目の骨折。そういう意味では、いつか通った路を戻り最寄駅に着いた。今回もまた新幹線の回数券を買うことになるのか・・・

それにしても、やはりこちらの空気の方が体に合う、合っているのがわかる。もうこちらでの生活の方が圧倒的に長いのだから。

 


自宅に戻りデスクのPCをチェックすると親戚のTさんからのメールが届いていた。

 

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大変でしたね。もう、決断の時でしょう。
遅きに失した感、否めませんが、本人の意向を尊重し、ここまで頑張ってきたんだから、悔いは持たないことですね。
BPSDに対する医療的アプローチ(薬物療法)も必要です。具体的にどこがいいかは、包括支援センターに相談するのがいいでしょう。


私は、沈み込むようにベッドに入り眠りについた。

 


翌日、夕方、日も暮れた頃、携帯に着信あり。登録したての「S病院」が表示されている。

 

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(おいおい・・・)

 

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もしもし?

 

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あっ、真坂さんですか?S病院です。実はですね、お母様が家に帰ると言って興奮されてまして・・・息子さんとお話しされれば落ち着くのではと思い、急なことながらお電話させていただきました。


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そうですか、それは申し訳ありません。電話を代わっていただけますか?

 

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もしもし? あぁ、母さんかい? どうしたのぉ!

 

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あっ、本当似なの?いやね、今✖️✖️にいるんだけど、帰ろうと思って1階に降りてきたところだよ。


(✖️✖️は、脳活の集いが開催されているところで、母が毎週通っている実家近くの施設だ)

 

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いやいや、母さん、そこは✖️✖️ではないよ。いいかい、母さん、二日前の朝、母さんは家で転んで骨折したんだよ。それがね、自分で救急車を呼んで、運ばれたんだ。その運ばれた先が、そこ、S病院だよ。

 

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えぇっ、そうなの! ここは✖️✖️じゃないの?


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そこは、S病院。右足を見てごらん。包帯でぐるぐる巻きになっているでしょう?母さんは足の骨を折ったんだよ。折ったばかりの今は、絶対安静だよ。勝手に動いたりしたらダメなんだよ。


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ええっ、そうなの!


横にいると思われる看護師さんに尋ねる母の声が聞こえる
(ここは✖️✖️でしょう?)
(いいえ、ここはS病院ですよ)


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そうなんだ。


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そうだよ、母さんは気が動転して、周りのことがわからなくなってるんだよ。気分が落ち着けば思い出すと思うよ。繰り返すけど、足の骨が折れたばかりに動き回ると、骨がずれて大変なことになるよ。せっかく病院に入ったのだから、大人しく、看護師さんのいうことを聞いて安静にしてなければ治らないよ。


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そうだね。お任せするしかないんだよね?


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その通り! わかってるじゃないか、母さん!そうなんだよ!
だから、ちゃんと看護師さんのいうことを聞いて安静にしていなければだめだよ。

 

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それとねぇ、この前見舞いに行ったでしょう?あの夜実家に泊まったんだよ。そしたら、親戚のEさんから誕生祝いの花束が届いたよ!

 

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ヘェ~、Eさんから・・・珍しいねぇ。

 

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程なくしてまた見舞いに行くから、その時、その花束の写真を撮って持って行くよ。病院は生花の持ち込みはできないからね。楽しみにしていてよ。それまで、ちゃんと介護士さんの言うことを聞いて動かないようにお願いしますよ。


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わかりました。


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では、そばの看護師さんに代わってくれるかな?


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もしもし?


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本当にお騒がせしてすみません。母も落ち着いたようです。どうもそこが病院でないと思い込んで、帰るということになったようです。認知症のこともあり、また昔から気が動転すると周りが見えなくなる性格なので・・・。


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いえいえ、ありがとうございました。

 


2日後にはまた母を見舞う予定でいるが、それまで毎夕こんなことが続くのだろうか、それとも沈静化するのだろうか。答えの出ない問いを自問したところで仕方ないので、このこと含め、これまでの経過報告を妹に入れた。

 


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(これこれしかじか・・・)
あまり BPSDが激しいと転院要求などくるのが怖いが、2日後にはまた見舞いに行く予定。

 

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困りましたね。なんとか追い出されないことを祈りますが、もう施設が妥当な状況に感じました。
現実的・下世話な話になりますが、認知症で銀行口座が凍結されると手続きが大変と聞いています。今のうちに対応しておかないと・・・どうなんでしょうか? 施設にもそれなりの費用がずっとかかるでしょうし、家族信託にして施設費用にあてられるようにしておけるのが一番良さそうですが、母を納得させる術が浮かびませんし、成年後見制度や家族信託のメリットデメリットも把握理解できてません・・・。
親戚のTさんのメールはドライですね。一線を引かれるのは当たり前なんだとは思いますが・・・。

 

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それと、二階のミシミシは父が亡くなり二階に泊まった夜、向かい方面から聞いているのである意味 いる のかもしれません・・・。

 

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(おいおい・・・)

 


(妹が母とは反りが合わないことはわかっているし、逆に、父に対しては心寄せる部分があると想像されるような話を聞いたこともある。)

 

(人は心寄せる方向に沿うように身の回りで起こることを解釈するものだと思うし、それは別にしても、私自身も神秘的なもの、宗教的なものを肯定的に考えてはいるが、「ある意味 いる」というのは俺にはわからないよ。それだけ、妹の方が思いが深い、ということなのかもしれないね。)


(その、より深く思いを寄せていた父さんに、「断を下した」張本人がここにいる、いわばあなたにとり私は仇、ということにもなるのかな。そしていま、私は、あのとき、天に向かい言い放ったごとく、誰かが止めない限り、そう、天誅でも下されない限り、粛々と同じようなことを母にも繰り返そうとしているのかもしれないんだよ・・・。)

 

-「あれも、これも、一気に(第二弾)」につづく-