アルツハイマー病 真実と終焉
数ヶ月前、偶々読んだこの本がストンと腑に落ちた。
母の様子をこれまで見るにつけ、食事面、運動面、精神面、併せ持つ疾病面、等々考え合わせると、それら様々な要因が複合的に混ざり合い、認知能力低下から認知症発症へとつながっている気がしてなりませんでした。
糖尿病があると認知機能が低下しやすいことは既に知られていますし、60歳を超えると5~6人に1人が糖尿病とも聞きます。母は初期的糖尿病と昔診断されたことがあります。今の状況とそのことが全く関係が無いとは思えません。
高齢者の認知症は単一の原因であることはむしろまれで、アルツハイマー病は単にその一側面であり、ほかにも高血圧、糖尿病、肥満、脳卒中といったいくつもの原因が共存しているというのが、認知症の「多因子説」〈図7〉 出処;国立循環器病研究センター
(医師でない者が四の五の言うのは御法度と指摘されかねない行為であること踏まえ、以下あくまでも個人的思いではあります)
いつも読書の際には大抵メモをとりますが、今回はそのメモから所々を抜粋、それに自らの思いを重ねてみました。
◇低下した認知機能は回復できる
⇒今後の臨床件数の増加・検証が望まれる段階ですが、私には"なんとなく"それは可能なはず、という思いがあります。むしろ、当人が素直に且つ積極的に回復に傾倒できるかの方がポイントになる気さえします。
◇ApoE4一つ保有(=片方の親から)→発症する生涯リスク30%、二つ保有(=両親から)→50%以上。一つもない人のリスクは9%。
ApoE(アポイー)=アポリポ蛋白E、人間のApoEには3種類の遺伝型、ApoE2、ApoE3、ApoE4が存在し、このうちApoE4はアルツハイマー型認知症のリスクが高い。
⇒アルツハイマー型認知症患者の6割が遺伝的要因を持っている、ということが言われるようになってきています。それならばなおのこと、「認知症?そんなの関係ないさ」という世代こそが、ApoE4の状況を判定し、その予防プログラムを速やかに始めるべきだ、というのが私の主張するところです。
ApoE4陽性だから必ず認知症、陰性だからもう安心というわけでは全くありません。寧ろ、陽性・陰性の判定だけに傾倒するのではなく、「関係ないさ」世代こそが今からこの問題をより身近に考える契機にする、それこそが最も大切なことだと私は思うのです。
遡ること4年程前、手軽に受けられる検査キットが発売されたというので、当時は物珍しさもあり私はMycodeという(現在DeNA傘下)遺伝子検査を受けており、改めてそれを確認するとアルツハイマー病の項目もその中にありました。
このSNP:rs429358がApoEで、TTが保有0,CTが保有1、CCが保有2。
◇ReCODE法
⇒この本の主張する柱となる治療法ですが、その方法については多くをここでは書きません。興味のある方は是非詳細を読んで頂きたいし、概要であればネット検索をしてもおおよそのところはわかると思います。
認知能力の衰え、認知症に関わる症状の進行については、各々の患者に応じた処置が必要になるはずですが、発症、症状の進行をもたらすものとして大きく3つの脅威、炎症、栄養素、毒素があげられています。
それぞれ例をあげておきますと;
- 炎症の一因として、トランス脂肪酸、糖、グルテン含む食品等。脳のダメージに対する抵抗力を高めるものとしてBDNF、エストラジオールやテストステロン等のホルモン、ビタミンD、葉酸
- 補助的栄養素として、ホルモン、その他脳の栄養となる分子の低下や不足
- 毒素とは、金属や生物毒素(カビなどの微生物が産生する毒物)等の有害物質
◇アルツハイマー病 1型、2型、1.5型そして3型
1型-炎症性のものは、ApoE4保有する場合に多く、ApoE4が1本もない人の症状発現は通常50代後半~60代。臨床検査で評価できる明確なバイオマーカー有(例;インスリン抵抗性等の代謝とホルモン異常)。
2型-萎縮性は炎症性タイプより約10年後に症状が始まる。(例;甲状腺ホルモン、副腎ホルモン、エストロゲン等ホルモン値が通常不足、ビタミンD減少、インスリン抵抗性orインスリン値が低、ホモシステイン値が低)
⇒物忘れ外来受診で甲状腺検査は行われる(母の場合も検査メニューにあった、結局検査まで行き着かなかったが)。但し、こんな↓記事も公開されている。
もしかすると、母はこの2型のタイプではないかと、全く根拠もないのに疑っている。母はその昔、初期的な糖尿病と言われていた。本人は、高齢者なら誰でもそう、というのが口癖だったが。
1.5型-糖毒性→慢性的に血糖値が高い
3型-毒物性はApoE4保有者よりも一般的なApoE3保有者に起きることが多い。算術、言葉・読み書きに苦闘。鬱病、注意欠陥など精神医学的影響。海馬のみならず脳の至る所に萎縮。血中亜鉛が低く、銅は高い。ホルモン異常。有害化学物質の血中値が高。
⇒そして、著者は読者に問いかけています、下線部↓について私は全く同感です。
私たちは、50歳になったら結腸内視鏡検査を受け、癌を予防すべきだと思っている。脳についてはどうだろうか?
認知機能検査を受けて、潜在要因とリスク要因を全て評価すること。炎症、ホルモン不足とその他の脳の栄養不足、毒性化合物、3つの状況を判定しておくこと。
無症候期と主観的認知機能障害SCIの時期は、それぞれ約10年続き、軽度認知機能障害MCIつまり軽度から中程度のアルツハイマー症期でも数年続く可能性。
⇒さらに、認知症治療を取り巻く現状について著者は厳しく指摘しています。
<認知機能検査の現状>
- 遺伝的特徴、ApoE状態に関する情報なし
- 炎症、病の立役者が評価されていない
- 感染症の検査が行われていない(単純ヘルペスI型、ボレリア、ジンジバリス菌・口腔細菌、各種真菌等)
- ホモシステイン値未測定
- 空腹時インスリン値への言及すらなし
- ホルモン状態、甲状腺検査が行われていない
- 水銀とマイコトキシン未検査
- 免疫システム未評価
- マイクロバイオーム未言及
- 血液脳関門未言及
- 脳容積測定がMRIに追加されていない(全般的萎縮は3型、海馬限定萎縮は1、2型に一般的に見られる)。
- 標的治療 わかりもせずに薬を処方
(但し脳腫瘍のような別原因に起因する場合も有、MRIorCATで可能性除去必要)
⇒一部については「そうかな?」と思われる部分あれど、特に一番最後、「わかりもせずに薬を処方」は手厳しい。そもそも認知症についてまだ解明されていない現状を慮れば、寧ろその通りではありますが、
ただ、もしそれが、「闇雲にとりあえずは」、「他に手だてがないので」、という意味までをも含むのであれば、巷でよく聞く、薬剤は処方されるが結局効かない、という評判がこだましてくる。
つい先日の地域包括支援センターでの面談で、なんとか物忘れ外来を受診し治療を受けてみたいという私に対する、包括さんの反応、
「認知症診断自体については、実際に受診され診断を受ける方、また、受診・診断を受けない方、両方いらっしゃいます。」
私はその言葉に、少なくとも実家のある区域において、受診・診断、というステップにさほどの焦点が当たっていない、何らかの理由を感じてしまったわけですが、”そういう部分”をも言葉の裏に含んでいるのかな、と今でも思っています。
ここまで、アルツハイマー病/認知症の発症~診断中心に、私の思うところをあわせて書きました。まずは、己を知ることが肝要、と受け止めています。
後半では、この本の推奨するもう少し具体的な対処方法の中から、個人レベルでも、私自身が今後留意していこうと感じたことについて、近日中にまた書き込みたいと思っています。