それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

線路はつづくよ、どこまで・・・

お彼岸には、土曜日に帰省、月曜日まで実家に滞在した。そして火曜日には例の包括さんとの約束がある。

 

火曜日と言えば、母にとっては「決戦は火曜日」の日だ。脳活教室に通う(といってもまだ1回だけだが)母に、初めて渡されているというパンフレットを見せてもらった。

 

なるほど、

✔クロスワードパズル(熟語、計算等々)

✔一言日記

✔歩数管理

✔身体測定結果とその見方アドバイス

他、盛りだくさんだ。

母にとっては、あの件どこに書いてあったかな、状態で、度ごと全てのページをめくらねばならない、というのも一つの脳活ならいいのに、とふと思う。

 

借りた万歩計を返したという母。以前もらった小さいのがあるからそれを使おうと思ったから、と言う。

試しに私と母でもらったという万歩計を室内で試したが、母だとカウントされないことが多々あること判明。やはり、母のような高齢者にはもう少しセンサーが敏感に反応するものでなければ無理なのでしょう。

 

「母さん、もらい物のこれじゃぁ、役に立たないよ」

f:id:masakahontoni:20180926163445j:plain

と、母の話から、脳活教室で借りたものに外見上近い歩数計を急遽そろえた。色々ボタンがついていたところで使うはずもないのでタニタのFB-731なる表示の大きい3Dセンサータイプのものだ。

 

「せっかく万歩計買ったのだから、早速始めなきゃいけないね」

 

「そうだね」

 

「それじゃぁ、一言日記に明日から頑張るぞ、とか好きな言葉を入れておいたら」

 

「そうだね」

と明日の日付をその箇所に書き込み、続けて一言を綴る。

 

「で、記録はどうやってこのグラフに書き込むのかねぇ」

 

「そういえば、母さん、さっきめくっていたページに、書き込み例があったじゃない」

 

「そうだっけ?」

 

それは、10分もたたぬ前、

「こんなものが知らぬ間にページに入ってたんだよ。油断も隙もないねぇ。こうやって書け、って言うわけなんだろうね」

と自ら言っていたものだ。

 

勿論、全く同じ会話がその後何度かあったことはいつも通りだが、

翌日になって、一つだけ違ったことを母は言った。

 

「この日付、誰が書いたのかね。知らない間に入ってるよ。」

 

 

f:id:masakahontoni:20180926170537j:plain

一体、この電車の行き着くところはどこなのか、

いや、この線路はどこまでつづいているのか、

もしかすると、同じところを回っているだけなのか、

私にはわからない。

 

乗り物酔いになり、途中下車しても、

気分が戻れば、結局また乗り込む、

それを繰り返す。

 

旅の行く先は知らされていない。

 

誰も知らないのかもしれない。

 

この電車を止める術はあるのか、

いや、線路の行き着く先を知る術はあるのか、

 

誰も教えてはくれない。

 

f:id:masakahontoni:20180926171415j:plain

少なくとも、

電車が動く限りは、

そこに線路がある限りは、

ただただ電車は動き続けるのだ

ただただそれに乗り合うことになるのだ。

 

 

母は、例え内容が切実なものであっても、心落ち着くことがない。

その眼球は、部屋を飛び回る小さな虫を追いかけたかと思えば、

小脇にある数枚の千円冊を手に取り指に唾付け枚数数え、

おもむろに、先ほど出した国語辞典をどこへしまったかと、

その場を離れようとさえする。

 

そこでやっと気がついた。

 

Aのことを考える

ふと、Bのことが気になる

Bのことを考える

ふと、Cのことが気になる

Cのことを考える

あれっ、Aってなんだっけな

となる

Aが思い出せなくなり悩み焦る

やっとAのことを思い出す

ふと、Dのことが気になる

 

朝から晩まで、母はこれを繰り返すのだ。

CPUでも、能力以上の負荷がかかればオーバーヒートする。

午後目に見えて母から活力がなくなる理由の一つ、

それはこれもあるのかなと。