それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

思い当たる節-々

f:id:masakahontoni:20180822153509p:plain

未だ、認知症介護士のテキストの要約メモ作成過程にあります。

が、さすがに1ヶ月ほど経過しますと、二分冊の内、知識編がほぼ終了。

知識編、ですから、何らかの理由で(多くは、多分身内の方の関係で)、様々な関連情報を色々なメディア通じよく聞く・目にするようなことが書かれていたな、という感じ。

なのですが、

知識編全13レッスン中、レッスン10と11があまりにもゾクゾクするものだったので書き留めておきます。ゾクゾクする、と書きましたが、楽しい・わくわくする、という意味は込めておりません、念のため。

レッスン10は認知症の中核症状について、レッスン11は認知症の行動・心理症状(BPSD)についてでした。このイラストは厚労省の政策レポートにあるものです。

f:id:masakahontoni:20180921155729j:plain

以下、レッスン中に説明されていたことと、私をゾクゾクさせたそれぞれを淡々とあげてゆきます。

 

レッスン10 中核症状

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain

あまりに動かない、前へ進もうとしない母に、思うがままに綴った手紙(=「母への手紙」)を読み聞かせたのが1ヶ月半ほど前。クローズアップ現代の「息子介護」の動画を見せ、もしかするとあの世から父さんが助けようと差し出した手かもしれないのに、なぜそれをつかまない!と私が憤ったあの日。その3時間後、母は、手紙を私が読み上げたことはおろか、動画を見たことさえ覚えていなかった、あの日。これはもうMCIじゃない、認知症だ、と覚悟した、あの日。


記憶障害

アルツハイマー型認知症に表れる記憶障害には「最近のことから忘れる」という特徴がある。=記銘力障害(一時的に記憶したことを自分の記憶の中に刻みつける作業が苦手になる)

一例;若い人でも、「三日前の夕食は何でしたか」と質問され、「忘れた」というのはよくあること。認知症による物忘れの場合は、献立はおろか、食べたこと自体を忘れてしまい「夕食は食べていない」と答える。

見当識障害

客観的に正しく認識する精神機能。現在の年月、時刻、自分がどこにいて、誰と生活し、誰と話をしているかなどの状況を把握する能力。

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain

母は、平行して何かをする、ということができない、いつそうなったのか、果たして、現在のそれが以下に該当するのか不明。だが、ごく最近、炊事をしている母と台所で話していたとき、母が話し込んでいる間、水道水が出しっぱなしだった。話をしているときは話だけ、という気がする・・・。説明されているほど重篤な状態ではないのが救いだが、未来は・・・?

実行機能障害

段取り能力。計画し準備し、それを首尾良く実行してゆく能力。衰えると、段取りを組んで行動することが苦手になり、次に何をしたらよいのかもすぐにはわからなくなる。一つのことを考えると、他に気を配ることが出来なくなる。

一例;料理がつくれなくなる、他、トイレに行く、お風呂に入る、外出の準備をする、など日常的な行為全般に及ぶ。食器を洗いながら、鍋で湯を沸かすなど、二つ以上の事を同時に行うことが難しい。


失認

感覚に関する機能に異常はなく、機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を正しく認識できない。脳神経細胞が損傷を受けていれば、脳が解釈する時点で混乱が生じやすくなる。

一例;人の顔には見えても、それが自分の子供と結びつかない。トマトという文字は分かっても、牛乳をトマトだと指さす。

 

数週間前の、この出来事

www.masakahontoni.com

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


 気が動転し、気がついたらかかりつけ医が後ろに立っていた、どうやって搬送されたのか、また家まで帰ってきたのか、全く覚えていない母だった。

 

抽象思考・判断の障害

抽象的理解力、状況判断力の衰え。予想外の出来事が起きた場合、とっさの判断が出来ず、混乱を招く。

一例;お金の計算力の衰え

 

 

いやぁ~これは・・・

www.masakahontoni.com

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain

 ・・・これでしょう。

 


失行

運動機能は正常で、行うべき行動を理解しているにもかかわらず、意味のある行動が出来なくなる状態。失認により失行も起こりやすくなる。

一例;「歯を磨いて」と歯ブラシを手渡されたとき、歯ブラシを「歯を磨くもの」と把握していながら、いざ使おうとすると、歯ブラシを耳に入れてしまう。

失語

言語機能が傷つき、言葉の理解が出来ない。

一例;トイレに行きたいと思っても「トイレ」という言葉が思いつかない。人から「トイレにどうぞ」と言われても「トイレ」という言葉が意味するイメージがわかない。「お風呂に入りたい」と繰り返す認知症の人をお風呂に連れて行くと、違うと拒絶する。この場合「トイレ」という言葉が思いつかず、代わりに頭に浮かんだ「お風呂」という言葉で代用して、トイレに行きたいという思いを表現している場合も。

 


レッスン11 行動・心理症状(BPSD)

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain

 


頑張りが裏目に・・・ここが心に沁みる・・・。

 

認知症の方は、記憶障害などの自覚はなく、適切な行動をとっていると思い込んでいる。が、実際に中核症状を抱えると、自分でもおかしいと思うくらい、周りとうまくいかない状況が増える。こうした周囲との摩擦・軋轢を感じる環境、心理的なストレスが引き金となり問題行動・異常心理を引き起こす。この症状は、本人の性格・理性にも影響を与え、性格が変わったように見えることも。

中核症状が進行しても、サポート体制が整った中で安心して暮らしていれば、症状は表れにくくなる。

困難に直面したとき、自分なりに問題に立ち向かおうと努力する人は多いが、この頑張りが裏目に出て、問題を起こしやすい困った性質と見なされるケースも。行動・心理症状は、中核症状により自立生活力が衰え、頑張ったつもりでも空転し、うまくいかなかった状態ともいえる。


徘徊、不安感・焦燥感

見当識の力の衰えで、今ここがどこで、周りにいる人が誰なのか分からなくなり、自分の家なのに夕方になると「家へ帰る」と言う。記憶力が衰え、特に最近の記憶が失われてしまい、その方の記憶の中にある自宅は、ずっと前に住んでいた、場合によっては子ども時代の違う家なのかもしれない。ただ、理由は同じでも、表にでる症状は人それぞれ。すぐに帰ろうとする人、とりあえず留まる人、ここがどこか周囲に何回も訪ねる人、等。性格・特性、環境(居心地の良さ)などにより異なる。

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


先の救急搬送時の動転ぶりもかぶる気がするが、あれこれと考え悩み、情緒不安定になり、かってやたらに電話をかけてくるのはいつも夕刻だ。動き回る、話も通じない、とまではいかないけれど。

幻視・幻聴・幻覚、せん妄

せん妄とは、一時的に意識が混濁し、夢か現実かはっきりしない状態。特に夜間に突然落ち着きがなくなり、興奮して動き回り、話も通じない状態になる。

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


幸い、盗まれた、暴言云々はないけれど。保険証がないけどあなた持って行った?等という程度(?)のことなら幾度となくある。

 

妄想、作話、拒絶、暴言・暴力

一例;

置き忘れ・しまい忘れたものを「誰かにとられた、隠された」と思う、誰かにお金などを盗まれたと思い込む、誰かに嫌がらせをされていると思い込む、妄想。

自分の感情と折り合わせようとすることから実際の出来事と異なる話をする、作話。周囲のアドバイスに対する、拒絶。

思いが伝わらないときに生じる、暴言・暴力。

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


特に午後2時頃からの落ち込み、意欲低下、は表情からうかがえるほど顕著。後始末の類いは問題ないが、引きこもりということもあり、日中ごろごろしていることが多いと推察。

うつ、不潔行為、不眠

気持ちが落ち込み、意欲が低下する、うつ状態。トイレなどの後始末がうまくいかない、不潔行為。日中寝てしまい、夜に眠れなくなる睡眠パターンの変調。

 

食行動の異常

食べ物とそうでないものの区別がつかない、異食。食べたことを忘れ、たくさん食べてしまう、過食。食べ物を食べない、拒食。

 

認知症の心理

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


そうか、そういうこともあるのか、とまさに「思い当たる節がある」のがこれ。

 

拒絶の心理

自分では一生懸命目の前の課題に取り組んでいるのに、毎日小さな失敗が増え、いつも周りから叱責され、理由も分からぬまま自信を失い、新しいことに取り組むことに慎重になる。

なじんだ生活パターンから外れたら、失敗の烙印を押されるのでは、と外部の行事へ誘われても、何もしたくないと拒絶する。外へ出れば失敗を繰り返す、嫌な思いをする、と思い家に閉じこもる。

 

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


見え透いたうそをつく、子供じみたうそをつく、見え見えの取り繕いをする、まるで母のことを言われているような気がする。この説明にあるようなところまで考え及んでいなかった。

作話の心理

認知症の自覚がなくとも、何かが違うと自分でも感じている。今まで出来ていたことが出来ない自分に苛立ち、理由も分からなければ、この先どうなるのかと強い不安を抱く。「出来ない自分」を認めることは簡単には出来ない。昨日までの自分と何一つ変わっていないと思う場合もある。

「出来ない自分」を受け入れられないとき、「出来ない」のではなく「本当は出来るけれど、やれない事情があって、自分の意志でやらない」と自分自身を納得させようとするのは当然の心理。

「トイレに行けないのではなく、そもそもしたくないから行かない」「お風呂に入れないのではなく、入る必要がないから入らない」と考えることで、「出来ない自分」と向き合うことを回避する。そして自分自身を納得させることが出来る理由、「風邪を引いているからお風呂に入らない」という理由を見つけ出し、自分を正当化する。それが、周りの人には「嘘をついている(虚言)」「話を作っている(作話)」ように見え、介護を拒否していると思われる恐れがある。これが行動・心理症状の作話で、拒絶表現の一つ。

 

暴言・暴力の心理

認知症の代表的症状、物盗られ妄想。最近物忘れがひどいと感じている人ほど、物忘れの症状を強く否定するため、責任を転嫁し「あなたが盗ったに違いない」と周囲の人を責めて自分を守る。

人間は、自身がない方ほど、自分の身や心を守ろうとする意識が強く働く。認知症の方の暴言・暴力は、哀れんだり責めたりしないで、自分の気持ちや行動を正しく掴んでほしいという訴えかもしれない。

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


母も以前は10錠ほど服用していた。特に高齢者はあそこが痛いここが痛いで痛み止めを処方されることが多い。これで頭がボーッとすることはないのかと心配したこともある。また、体調が芳しくないとごろごろ、うつらうつらとしていることにも通じ、そういう身体的ストレスもいろいろな影響を及ぼしているのでは、と今も思っている。

体調不良からくる心理の変化

強い心的ストレスだけが原因ではなく、身体的ストレス(不調)も原因になる。

排便の記憶がなく便秘に気づかない、のどが渇いたというサインを脳が認識しにくくなり脱水症状になる、熱があるのに気づかない、等身体的不調が焦燥・せん妄を生じさせる。

持病を抱え様々な薬を飲んでいる高齢者は、その副作用で、認識力が低下、幻覚が起きるなど色々な症状が悪化する場合がある。

 

サポート体制、性格・・・どうしたものか。

www.masakahontoni.com

 

f:id:masakahontoni:20180921160434p:plain


↑この件もあるので、近々お彼岸で帰省の折、包括さんとの面談を予約済みですが、まだ色々雲をつかむような部分があり、どこまでの話となるかは全く予想がつかない。

周囲のサポートが症状を和らげる

認知症を理解し生活を見守ってくれるといった、不都合が生じにくい環境が用意され、適切な周囲のサポート体制が整えられていれば、大きな混乱や不安を感じることはありません。

年齢のせいかなと思いながらも、立ち向かおうと頑張っているときに、環境・サポート体制が整っていないと、孤立したり、追いつめられたりして、強い行動・心理症状が発症することも。

また、環境・サポート体制が整っていても、性格上、周囲のサポートを拒む場合は、様々な行動・心理症状が生じやすくなる。

行動・心理症状は、認知症の中核症状が表れたとき、自分一人で乗り切ることが難しくなったというSOSのサインといえる。