それ 認知症かも

認知力の衰えを頑なに否定する年老いた母。それを反面教師に自らのこれからを考える息子。

骨折病棟

(回顧録)

2年近く前、郷里にある救急病院から電話。母が、転倒し骨折、入院したという。

 

f:id:masakahontoni:20180824110859p:plain早々に帰郷、運び込まれた病院へ。電話で知らされていた病室を訪ねると、一般病室入ってすぐベッドに当人を発見。顔色は悪くない。曰く、畳の上で滑った、と。変な体制で受け身をとり、左上腕部を骨折。痛みをこらえ、近隣のかかりつけ医に駆け込み、そこから地域の救急指定病院へ担ぎ込まれた、と。

ほどなく看護婦さん登場、以後の段取りについて説明を受ける。そのあたりは大病院、手続き云々の段取りはスムーズで、所定の書類に基本事項を書込、判を押すだけで大抵のものは済んでしまう。

最後に、当人と共に担当医と面談、レントゲン結果を見ながら説明を受ける。

 

f:id:masakahontoni:20180824112103p:plain変な折れ方をしていないので、ある意味幸運でしたね。

 

と言われ安堵。いずれにせよ、しばらくの入院が必要となるようだ。骨がつくまでには短く見ても1ヶ月(完全に"つく"という意味ではありません)以上かかるのだろう。

 

が、そもそも、緊急入院したとの電話連絡があった時点で、病院側から申し置かれていたことがある、"緊急時以外の入院は基本的に受け入れていないので、今後どうするか相談したい。適当な転院先を紹介することもできる。”・・・

面談時にもこの話が出、(傷の程度に鑑みて)二週間以内を目処に転院先を見つけてほしい、とのこと。患者の症状により、必要なサポート体制の程度に準じて候補先が紹介されるようだ。

幸い、その救急病院そばにある、中規模病院(入院設備、リハビリ設備有)への転院がすぐに決まった。

 

そこでは貧乏揺すりがトレードマークの副院長が担当して下さったが、入院後すぐ撮ったレントゲンを見てしきりに首をひねる。

数日後、直接電話あり、相談したいことがあるという。早々に帰郷、面談にのぞむ。

 

f:id:masakahontoni:20180824131616p:plain今日再度撮ったレントゲン見ても確認できるけど、折れ方から見ても手術をした方が回復が早いように見える。年齢から見ても、余り腕を固定しておくとかえって機能回復に影響出ることが懸念される。救急病院の見立てはちょっとアレだな。

 

当初、本人は嫌がっていたが、後日見舞いに来た友人の助言もあり手術を決意。そこからトントン拍子に日程が決まった。

- ここから先はまた別の書込で・・・ -

 

いや、ここに書きたかったことは、母の入院で気づいた「右も左も骨折患者」という今時の日本、題して「骨折病棟」。

f:id:masakahontoni:20180824132439p:plainおよそ物心ついてから病院というもののお世話になったことがほとんどない異邦人のような私が、母のこととはいえ、そのど真ん中に入って驚いた。

スポーツで怪我した、松葉杖つくこども、三角巾つけたお兄さん・・・的なイメージしかなかったのに。

そこは、右も左も、高齢者。おじいさん、おばあさんの巣窟だった。ある人は、足を折り、ある人は腕、足、腰、背中。皆さん、すべからく高齢者の骨折入院患者ばかりだったのだ。

救急病院然り、その後の転院先然り。なんでこうもまた、高齢化社会とは言え、こうも皆さん骨折しているのか?

 

以前に比べて労災事故と交通事故による骨折が減少し、代わりに高齢者の転倒に伴う骨折が増加しています。

情報源: 第29回ヒップジョイントコラム「大腿骨近位部骨折が増加しています-50歳を超えたら骨折予防-」愛媛大学医学部整形外科 地域医療再生学講座 教授 間島 直彦 先生 | 公益財団法人 日本股関節研究振興財団

その理由として挙げられているのは大抵の場合;

  • 足腰が衰え、転びやすくなっている
  • 骨粗鬆症で、折れやすくなっている

となれば、付随してあげられている対策も自ずから;

  • 運動
  • 食生活
  • 骨粗鬆症の検査・治療

ということになっているようです。骨粗鬆症検査は高齢者なら多くの方が受けていると思われますが、では治療は、となると、治療は受けず食生活で、とか、サプリで、という方向へ向かっているように見えます。

ただ、母のこれまでの状況を鑑みた上で強調したいのは、高齢者の食生活です。

これは厚労省のサイトから切り取ってきたグラフですが、

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男女ともに、85歳以上の低栄養傾向が顕著かな、と。しかも、女性では65~84歳でほぼ2割程度の方々が低栄養傾向の状態にあり、同年齢層の男性より高い割合を示しているのがわかります。

恒例になるほど食が細るのは仕方ないとしても、なおさら、その内容が重要になってくるはず。

ところが母の食生活など見ると、まるでご飯をおかずにご飯を食べている、かのような状況・・・

実はこれ、お年寄りに限った話ではない気がします。


焼きそばをおかずにご飯を食べる、たこ焼きをおかずにご飯を食べる、あ~それそれ、あるある!と思う人! かく言う私も、遙か昔になりますが、ラーメン・ライスなんて平気で注文していたのです。

これ今風に表現するとどうなるのでしょう。炭水化物をおかずに炭水化物、いや、糖質をおかずに糖質。炭水化物だって必須栄養素、でもそれだけではね、ということが、あまりにも慣れ親しんできた私たちの食生活の中には(年齢問わず)あるように見えます。

お年寄りに米粒食べるな、というのではありません、逆にメディアの煽りに乗せられ、そう思いこまれるほうが困ります。要は、食した主食(ごはん)に見合うだけの他栄養素をバランスよく摂取できているかにあります。

 

今回の表題は「骨折病棟」。骨、といえばカルシウム? じゃあ何を食べれば、と沢山の人がグーグルなどで検索。あ~カルシウム摂るならこの食品、ビタミンDなら、ビタミンKなら、とネット上のみならず、週刊誌に至るまで特集が組まれてきたここ数年。あ~そういえば、と目にしたことのある人、きっと沢山おられるでしょう。

なのに、なぜ、それが結果にむすびつかないのでしょう。データ集積・解析もせずにいきなり勝手に言うのも気恥ずかしいのですが・・・

「その気がないんだと思います」

日本って自己責任上等思想(私がそう呼んでいる)に浸かっているので、はい、伝えるべき事は伝えました、あとは個人でよろしく。できなかったら自己責任。・・・なので、自ら本気で行動を起こさぬ限り、あとの祭り、みたいな未来が大きな口を開けて待っていると思うのです。

バナナがいい、生姜がいい、次はヨーグルト、今度はオクラだ・・・何日かおきにどこかのメディアが「これがいい」特集を組み、度ごとにスーパーで品不足が起こる。が、それも数日のこと。つまり、なるほどと煽られ試しはするものの、長続きしないのだ。だって、そもそも「その気がないのだから」。あそこの店の何々が本当においしい、と聞くとチャンスがあれば食べたい・味わってみたい、けど、通い続けるわけでもない、とりあえずインスタにあげて終了、みたいな。


でも、この話は趣味の話ではありません。あなたの身近な人、そして、あなた自身に訪れるであろう未来に直結する話なのです

とても残念な にわかに信じられないことですが(骨折入院中の母にも伝えたことです)、高齢者の隠れ栄養失調が多いらしい。

飽食の時代といわれ幾久しい日本。店頭にはものがあふれ、何万トンという食品廃棄が「もったいない」と時々話題になる日本。その環境下での、栄養失調、です。

つまり「食べるべきもの」を食べていないのです。そりゃ、年とともに食は細る。量は食べられないが、より「おいしいもの」を食べたくなる。皆さんにとってのおいしいものって何?甘いもの、ケーキみたいな? 脂っこいもの、唐揚げみたいな? どうせご飯食べるなら、焼きめしの方がおいしい?やっぱチャーハン?

そういうことなんだと思う。それ、高齢者でも同じ。いや、高齢者ならさらに、あの栄養、この栄養・・・もうめんどくさい、年とってからアレコレ言うな、うまいもんが食べたいんじゃ。だよね・・・。

母には耳にたこが山盛りでできるくらいクドクドと言いましたが、駄目でした。

だから、拡声器を使ってでも言いたいのです。「今のうちから」考えて!と、皆さんに。「今のうちに習慣づけ」ておくことが肝心じゃないかと。

私たちは、栄養状態と認知機能(頭の働き)との関係を明らかにするために、地域在住の高齢者の方を対象とした調査を行いました。この調査は、群馬県と新潟県に住む70歳以上の約1,150名の方を対象として今から約10年前に開始し、その後4年間の追跡調査を実施しています。調査の内容は、栄養状態をみるために血液を調べた他、認知症と強く関連する認知機能3)や、生活習慣全般としました。追跡調査を完了したのは682名であり、追跡調査時点で認知機能が低下(全般的認知機能の評価尺度MMSEが3点以上低下)していた人の要因を分析しました。

情報源: 食生活に要注意 -高齢者の低栄養はキケンー|地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所

 
不謹慎な言い方ですが、あちらでポキッ、こちらでポキッ、そこらじゅうでポキポキ骨が折れ、ものすごい数のお年寄りが次々に入院しています。そして、入院をきっかけに、寝たきりになってしまう、認知症を発症してしまう、方が少なからずいるのです。

それが、その後の介護を難しくもさせている、と言ったら言い過ぎでしょうか?

 

以上、「食生活」での対策で思うところをここまで書きました。

「運動」「骨粗鬆症」については別の機会にまた母の容態にからめて書込をしたいと思います。

 

「運動」でも「骨粗鬆症」でもそうですが、今騒がれているのは、そうなってからの話。もちろん、それも大切。だって、それで困っている人があふれているのですから。

 

でも、もっと、いや、さらにもっと、騒がなければいけないんじゃないの?「そうならないためにどうするか」を。